店を出る頃には私は立派な酔っ払いと化していた。
「歩けるか?」
覚束ない足を必死に動かそうとする私の腰にナチュラルに腕を回し、そう問いかけてくる。その質問に答える事を放棄した私の唇が、弱い心を吐き出した。
「わたし、どうすれば、よかったんでしょうか」
見つめていた地面がぐにゃりと歪む。気分が悪くなってきそうで、咄嗟に瞼を下した。
「これで、よかったのか…わからなくて、」
もう自分が何を言っているのかも分からなかった。もうとっくに平衡感覚を失った身体は支えてもらっていないと、容易く崩れてしまいそうだった。
随分と絶っていたアルコールを大量に摂取した身体は、尋常じゃないほどに火照っている。滲んだ汗で額に張り付いていた髪が彼の長い指に払われて、その感覚に下ろしていた瞼を持ち上げた。
「今だけ、全部忘れろ」
降り注ぐ声も、見下ろす瞳も、支える腕も、何もかもが違う。
似ても似つかない彼の中に、愛してやまない人を、必死に探した。