視線を巡らせてみれば、横断歩道を渡った先に大きなショッピングモールが佇んでいるのを捉えた。迷うことなく、足はそこに向かって動き出す。


離婚してすぐに見計らっていたようなタイミングで都心への異動が言い渡され、まるで逃げるようにこの地を離れた。もう二度と戻ってくる事はないだろうと思っていたのに、俺はまたここに居る。


5年という月日は着実に世界を変えた。


古びた公園があったはずの場所には高層マンションが聳《そび》え立ち、多感な時期を過ごした母校はいつの間にかその校名も外観も、初めてみるものになっていた。流行りのアイスクリーム店、都心で有名なラーメン屋、そして今足を運んでいるショッピングモールでさえも、俺が以前この地に住んでいた時には存在しなかった。


この世界はいつだって目まぐるしく姿を変える。






ひやりとした空気に包まれている店内に安堵にも似た息をひとつ零しながら、雑貨品が並ぶ箇所を探す。初めて来たからか、その場所にありつけるまでに思ったよりも時間を費やしてしまった。

もう書ければなんでもいいか、と少し投げやりな気持ちで目に付いた黒いボールペンに手を伸ばした――その時だった。