不完全なままに進み続ける足を、エレベーターの前でぴたりと止めた。



「…ばかみてえ」


ほんとう、ばかみたいだ。


どれだけ前に進めと言い聞かせたところで、どっちが前なのかも分かっていないくせに。どんな場所に辿り着いたところで、追い求めているものを捨て切れないくせに。


こんなの、ばかとしか言いようがないだろう。



そう苦笑しながらも、



『だれが、おかあさんを、守ってくれるの?』



最後に頭の中に反響したその声に、俺の身体は心が赴くままに動いていた。