家の中の構成はまだ覚えている。迷わず真っ直ぐに子供部屋である扉を開けて、辺りを見渡す。

そこらじゅうにオモチャが散乱していて、確かに一見すると何処にも太陽の姿は見受けられないように感じた。

尚も視線を動かしながら、静かに部屋の中へと歩を進める。

大きなオモチャ箱が目に留まり、なんとなく中を覗いてみたら、その先に捉えた光景に思わず笑みが零れてしまった。




「居た」


ぽつりと呟いた俺の背後で「え?」と、菜穂の小さな声が零れた。その音を耳に受け止めつつ、箱の中に両腕を伸ばす。

大きなオモチャ箱の中、恐竜のぬいぐるみと寄り添うように眠る太陽が居た。窮屈そうに丸まったちいさな身体を、慎重に抱き上げる。

すやすやと眠る存在を腕に抱き留めて振り返れば、菜穂は大きく目を見開いた。



「うそ…、私、居ないと思って…っごめんなさ…っ」


みるみるうちに溜まった涙が、ぽろぽろと零れ落ちる。それが安堵からくるものだといい。そう思いながら、自然と綻んでいた口で言葉を吐いた。


「そっくりだな」

「…え?」

「菜穂も、こうやって隅っこで寝るの、好きだっただろ」


遠い日の記憶を辿る。一緒に寝る時、菜穂はいつも壁側を好んでいた気がする。朝起きれば必ずと言っていいほど壁のほうに身を寄せて、窮屈そうに丸まっていた。

その姿を見るたび、俺に抱き着いてくれたらいいのにと思った事を覚えているから、きっとこの記憶は正しいはずだ。



「やっぱり、親子だな」


まるであたたかいものを見るような目でそう言えば、菜穂は全ての色を失ってしまったかのような空虚な目で俺を見つめ返した。