ーー魔剣。

僕はこの剣をそう呼んでいる。
見た目は至極普通の剣。刃が黒いがそれ以外は特に変わったところはない。

ただ、この剣を抜く度にあやつり人形のように身体が勝手に動く。意識は辛うじてあるが自分で身体を動かすことは出来ない。

それは誰が相手でも変わらない。

一旦抜けば僕は僕ではなくなる。

今、僕の前に転がってるのは親友の変わり果てた姿。

僕の握られた剣の漆黒の刃に螺旋のように鮮血がつたり滴が地面に一定の間隔で落ちている。

僕にはこの状況は理解できない。

気がついたらこんなことになっていた。

でも、なぜか心做しかスッキリしてる。ざまぁみろって思っている。

なんで?

僕には理解できない。理解したくないーー。




「ーーう、うわあああ!!」

僕が叫び声をあげながら上半身を勢いよく起こすと、どうやら夢を見ていたようで残酷な光景は消えいつもの寮のベッドにいた。

右隣のもうひとつのベッドには親友のソレイユがすやすやと寝ている。

よ、よかった……夢だったんだ……

荒くなった息を整えながら冷や汗を拭うと薄暗い部屋の中で不気味に月明かりに照らされる剣が視界に入る。
教科書やら資料が積み重なってるところに立て掛けられてある剣は僕を誘惑するようにひとりでにカタッと倒れた。

でも、そんなことをしても意味が無い。

剣を抜かなければ僕の意識は正気だ。

僕は目を細くさせ剣を睨むともう一度眠りについた。