午前4時30分、春山と別れた凛太は家に帰るなりスマホの上で指を走らせて自分が明日に向かう場所を確認した。飲み会の日が決まってからもう何度か地図アプリで店の場所は見ているけれど念の為にもう一度。

 すぐにやめようと思っていたバイトだけれど、凛太はこの飲み会を結構楽しみにしていた。色々と期待していることがある。きっと今までのバイトの飲み会やサークルの飲み会よりも面白いことが待っている。

 まずは何と言ってもあの変人達が一堂に会して酒を飲むのだ。酒を飲むとさらに面白い方向に性格が変わるかもしれないしプライベートな時間には一体どんな会話をするのだろう。自分は聞いているだけでも楽しめそうである。

 さらに昼に働いている事務員や看護婦たちもどうやら飲み会には参加するらしい。院長は一日病院を休みにして飲み会を決行することに決めた。だから、普段会うことはない患者に直接接している人達に会える。

 悪夢の中に入るなんてとんでもないことはしてないとはいえ、馬場院長のもとに集まりあんな病院で働いているなんてきっとその人たちもかなりの変人であるはずだ。今回の飲み会で会ってそれっきりの関係になるかもしれないがどんな人たちなのか見るのは楽しみだった。

 そして何と言っても春山だ。今回の飲み会でチャンスがあればもっとお近づきになりたいし、まずは気まずい間柄をなんとかしなければならない。

 履歴に残っている住所から検索した地図上の居酒屋を見ながら凛太は唇を丸める。スマホを持つ手にはいつの間にか手汗をかいていた。

 夕方になると凛太は外出の準備を始める。いつもよりも長く鏡の前に居座って自分の顔や髪の状態を見た。おしゃれをしてあまり普段と違い過ぎても変に思われるかもしれないので自然な範囲で香水を付けたりなんかもした。

 何時までやるのか聞かされていないが20時からと聞いていた。現地集合でバイトの学生たちはお金を持ってこなくてもいいらしい。

 始めていく店だったので少し早く着くくらいに家を出た。暗くなって色の付いた看板がよく目立つ歩く居酒屋街はどこもにぎやかだった。この辺で飲むならみんなここにやってくる。どこの街にもあるだろう地域で有名な場所だった。

 辿り着いた住所には5階建てのビルがあった。看板を見る限りはどの階にも酒を飲む場所があるビル。そこには凛太の目的地の店名も書かれていた。

 3階だったので階段で行こうかエレベーターを使おうか迷っていると知った顔を見つけた。初めてのバイトから一番話した数は多い眼鏡の増川だった。

「あ、増川さん。こんばんは」

「おう。こんばんは。ちょうどエレベーターきたよ」

 増川と一緒にエレベーターに乗ると中からアルコールの香りがした。それにしてもばったり会うには一番良い男がいた。今バイトの知り合いでは増川の隣が一番落ち着く。

「楽しみやね」

「はい」

「このバイトの飲み会はけっこういいもん食べさせてくれるから」

「そうなんですか」

「うん。やっぱ病院だから金あるんだろうね」

 エレベーターが開くとすぐに店の受付があって席を聞くと奥の部屋に案内された。