そういえば夕海は一度だけ、翔平に逢いに東京まで来たことがあったのを思い出した。
キャンパスからの乗り継ぎの関係で池袋で待ち合わせて、サンシャインの水族館や池袋のアニメのグッズの店へ行ったりしたのだが、
「ね、よかったら一緒に暮らそう?」
とあのとき言った夕海の言葉の意味を、帰り際まで考えていたものの、皆目わからないまま玄関を出た。
カスタムカブを再び走らせると、高校の裏手の展望台へ向かってみた。
すっかり整備されて新しくなっており、駐車スペースは広くなっているし、当時なかった売店まである。
ちらっと寄ろうとしたが、誰かに会うかも知れないと思い返して坂を下った。
結局そのまま帰って、未だに展望台までは行けずじまいである。