それでも母親は何か感づいていたのかも知れない。
「夕海はなかなか友達ができなくて、千夏ちゃんと駒木根くんがほんとの友達で、だから駒木根くんがたまにこっちへバイクで帰ってくるのを楽しみにしていたんですよ」
夕海の家は少し複雑で、夕海の両親が離婚して、母親が夕海を連れて引っ越してきた。
たまたま近所で町内会の役員をしていた翔平の母親と知り合い、それがきっかけで話すようになっただけのことに過ぎなかったのだが、
「だから夕海もホントは東京に戻りたかったらしいんだけど、うちは裕福でなかったし」
学費を工面することが出来ず、それで田舎に残ったらしかった。