翔平と夕海は、田舎なだけに原付での通学が許されていて、翔平は祖父の形見であったC50に乗って通学していた。
「爪先が引っかかるから」
という単純な理由でレッグカバーの泥よけをカットして、ホームセンターで買ったガラス窓用のパッキンを嵌め込んで乗っていたのだが、
「私も乗せてくれない?」
と頼まれ、夕海をリアキャリアに乗せて通学したこともあった。
そのうち夕海も誕生日が来て免許が取れたので、夕海はスクーターに乗るようになって、二人で並んで通学するようになったのであるが、
「あの子、駒木根くんと同じのに乗りたいって言って、アルバイトでお金貯めたりしてたんですよ」
そういえばいつであったか、中古のC50を買って乗ってきたことがあった。
「これで坂道で置いて行かれずに済む」
そう言いながら、夕海は登り坂でスロットルを開いて翔平のすぐ後をついてきたことがあった。