全ての片付けが終わるまで優平は何日か来ていたが、後片付けが済むと、
「田圃が心配ですよね…」
土砂の流れた棚田は重機でないと復旧は難しいらしく、
「いや、逆にこれでここを離れる踏ん切りがついた」
善子は藤沢の花世と観海のもとへ移る決心がついたようで、
「せっかくカブも直したのに、処分するしかないのかなぁ」
「西木野さん、乗るなら乗っていいよ」
どうせなら詳しい人に乗ってもらったほうがいい──善子のいつわらざる思いであったらしかった。
「でも…」
「だって娘は車もあるから」
善子は決めたら動かない気性であるらしい。
とりあえず優平はその日は結論は出さなかったが、数日して別の集落へボランティアへ移動することとなって、挨拶に顔を出した際、
「あんたにあげるから乗りなさい」
善子は鍵を優平に渡したのである。