その日は愛媛から持参したらしいもので炊かれた鯛めしをみなで食べ、翌日は休みでもあったので希は佑一郎を鎌倉へ案内した。
「バイクで鎌倉走るん、夢やったんよ」
佑一郎はテンションが高かったようであった。
「ライダーは湘南か北海道を走るんが夢で、あとはこれで北海道に行くだけなんやけど、さすがに宇和島からは遠いけぇ」
材木座の海岸で停め二人でアイスを食べ、海を眺めながら佑一郎は言った。
「希ちゃんは、夢はあるんか?」
「いや、まだ…」
「夢は持つだけ持っとけ。そしたら老けんで済むけぇ」
バイクのカスタムと人生は完成予想図が大事じゃけ──佑一郎は器用にアイスを食べながら、
「こげな風にしたいって思ってたら、面白いぐらいパーツ揃いよるし、ほんで組み付けながら予想してゆくと、これほど楽しいこともないけん」
どうも祐一郎はカスタマイズしながら夢に近づいているようであったらしい。