それでも一度だけルビーが、日本の伝統的な場所に行きたいと言ったので、鎌倉の鶴岡八幡宮へカスタムカブでツーリングをしたことがあった。

 海岸通を江ノ島から抜けると、腰越で電車と並走するように走り、昼下がりの八幡宮へと来る頃には道も少し混んでいた。

 駐車場に停めたあと能舞台のあたりまで歩くと、白無垢に綿帽子の花嫁と朱傘の列に遭遇した。

 大也は何度か見て慣れていたがルビーは初めて見たらしく、

「That is?」

「Bride procession」

 花嫁だと説明をすると、ルビーは石段の先の社殿に白無垢が消えてゆくまで目をそらさずに凝視していた。

 石段の上の本殿で参拝だけすると、大也とルビーは糸巻の形をした縁結びの御守をお揃いで買った。

 別にルビーとは何の恋情もなかったのだが、少しは日本らしい物がいいだろう──といったような単純な思いつきに近いところであったのは、いつわらざるものであったかも分からない。