華子が渡された名刺を健次郎が見ると、

「…東條一誠(いっせい)って、アイツのことかなぁ?」

 どうやら知り合いらしい。

 LINEでその場で訊いてみると果たしてそのとおりで、

「コイツ、俺のツーリング仲間だよ」

 世の中狭いなぁ──健次郎は再び笑った。

 程なく一誠のアドバイスどおりに華子はシートカバーを新しくしたのであるが、クラシックな雰囲気にしたかったのか、茶色で統一したものにした。

「茶色にすると雰囲気変わるんだねぇ」

 皓が見たそれは、どこか外国のバイクのようなノーブルな感覚をまとったような姿のカスタムカブであった。