それからの華子はまるで、子供が初めての自転車を買い与えられたときのように、歩いて行ける距離のコンビニにさえカスタムカブを使って買い物へ行ったりするほど、理由なんかなくても乗っていた。

 もともと通勤用であったから、定期券代で代金は楽々と肩代わりで終わり、皓もオレンジのカスタムカブを見ると、

「カコちゃん今日は内勤なんだ」

 などと分かるようになった。

 休日に晴れていると華子は、アパートのある茅ヶ崎から国道を転がして鎌倉へ行ったり、ときには横浜まで遠乗りすることもあって、

「その素敵なバイク、どこのショップで買ったんですか?」

 などと女子大学生ぐらいの子から声をかけられたこともあった。