それで修を呼び出せ──という話になったのだが、電話もメッセージもつながらず、しまいには警察が出張って捜索願が出される始末になった…というのである。
「有馬、すまんが俺は知らんから」
それだけを言うと一方的に通話を切った。
茜にことの仔細を語り聞かせると、
「修さんはどうするの?」
「横浜に帰りづらいんだよね…」
「じゃあ、私のお兄ちゃん役場にいるから聞いといてあげるよ」
茜ははずむように言った。
その日の夕方、クロスカブにロープで荷物を縛り、帰り支度をしていた修に、
「津島茜の兄です」
役場で移住支援制度を担当していたらしく、
「よかったら体験ツアー、やってみませんか?」
というので、仕事も上手くいっていなかったのもあり、そのまま空き家を借りての移住体験をすることにした。