夜中の電話ほど心臓に悪いものはない。

 その夜の穂積(ゆたか)から(こま)木根(きね)翔平へかかってきた電話も、蒸し暑かったのもあって、あんまり心地の良かったものではなかった。

「黒澤夕海(ゆうみ)が亡くなったんだって」

 クラスメイトであった彼女の訃報を聞いたのも、深夜の十一時を過ぎていたから、確かに真夜中である。

「何でも、浴室で首をつっていたらしい」

 明らかに自ら生を絶ったのであろう。

 聞けば密葬はすでに終わっていたらしく、

「お別れ会ついでのクラス会をするらしいんだが、駒木根はどうする?」

 というのが穣の眼目であった。