結果、紗凪は解体の一部始終を見届け。
臓物が出ても、きゃっきゃとはしゃぐだけで終わり。
しかも、初挑戦なのに生き血のポートワイン割りを飲むまでやってのけたのだ。
可愛らしい見た目に反して、豪胆だった。
さすがは、烏天狗の彼女だからか。
「んん!? お肉のお刺身美味しい!!」
今はスッポンスープが出来るまで、脚肉の生姜醤油和えを口にしていた。
今日のスッポンは仕入れた二匹とも雌だったので、全員卵も堪能したのだった。
「うむ。相変わらず美味いでござる」
「あんたの口調も相変わらずねぇ、翠雨? 烏天狗の次期頭領だからって」
「昔からこうでござった。今更変えるつもりはござりませぬ」
「あっそ。別にいいけど」
真穂と知り合いだと言うのは知っていたが、少しぎこちなく感じた。真穂と言うより、翠雨の方が。
「……真穂ちゃんと翠雨さん、仲悪いの?」
恐る恐る、真穂に聞けば。彼女は猪口を傾けながらからからと笑い出した。
「違う違う。こいつが赤ん坊の頃から知っているから、ちょっと反抗期なわけ?」
「な!? 真穂様!!?」
「事実じゃなぁい?」
「えー? すーくんが赤ちゃんの頃ってどんなんだったんです?」
「あら、聞きたい?」
「是非是非」
「やめろでござる!!?」
ああ、なんだ。杞憂だったのか。
美兎はほっとしてから、梅酒のロックを口にした。氷が少し溶けて薄くなったが、それもまたまろやかで飲みやすかった。
とここで、美兎は思い出した。
「火坑さん、今日の心の欠片を」
「ええ、お願いしますね?」
「へ? なにそれ??」
そう言えば、紗凪にはまだ伝えていないのを思い出した。
「魂の欠片とも言いますか。ただ、直接寿命などには関係がありません。わずかな片鱗、魂の輝きを僕のような妖が顕現します。その引き出しを可能とする方から、お代金の代わりにいただくんですよ。それは、ほとんどの場合食材になります」
「へー? そんな仕組みがあったんですね?」
「引き出すことを可能とする妖は少ないでござるからな? 紗凪にはそう言う店に連れて行ってなかったゆえ」
「どーやって取り出すんですか?」
「見ててください」
美兎が両手を火坑の前に差し出して、火坑の肉球のない猫手がぽんぽんと触れてくる。
お決まりの、一瞬フラッシュをたくように、店内が白い光に包まれて。
消えた時には、少し見覚えのある白っぽい魚肉が笹の葉の上に乗っていた。
「うわ!? ぽんぽんしただけで出てきた!?……はまち??」
「いや……それは、マンボウの肉でござる!?」
「あら、季節外れだけど、珍味じゃない?」
「火坑さん、これなら」
「ええ。せっかくなので、作りましょうか?」
マンボウのカツカレー。
前回のマンボウの肉は、シンプルに串焼きでいただいたから。
翠雨に提案すると、思いっきりガッツポーズをしたのだった。
臓物が出ても、きゃっきゃとはしゃぐだけで終わり。
しかも、初挑戦なのに生き血のポートワイン割りを飲むまでやってのけたのだ。
可愛らしい見た目に反して、豪胆だった。
さすがは、烏天狗の彼女だからか。
「んん!? お肉のお刺身美味しい!!」
今はスッポンスープが出来るまで、脚肉の生姜醤油和えを口にしていた。
今日のスッポンは仕入れた二匹とも雌だったので、全員卵も堪能したのだった。
「うむ。相変わらず美味いでござる」
「あんたの口調も相変わらずねぇ、翠雨? 烏天狗の次期頭領だからって」
「昔からこうでござった。今更変えるつもりはござりませぬ」
「あっそ。別にいいけど」
真穂と知り合いだと言うのは知っていたが、少しぎこちなく感じた。真穂と言うより、翠雨の方が。
「……真穂ちゃんと翠雨さん、仲悪いの?」
恐る恐る、真穂に聞けば。彼女は猪口を傾けながらからからと笑い出した。
「違う違う。こいつが赤ん坊の頃から知っているから、ちょっと反抗期なわけ?」
「な!? 真穂様!!?」
「事実じゃなぁい?」
「えー? すーくんが赤ちゃんの頃ってどんなんだったんです?」
「あら、聞きたい?」
「是非是非」
「やめろでござる!!?」
ああ、なんだ。杞憂だったのか。
美兎はほっとしてから、梅酒のロックを口にした。氷が少し溶けて薄くなったが、それもまたまろやかで飲みやすかった。
とここで、美兎は思い出した。
「火坑さん、今日の心の欠片を」
「ええ、お願いしますね?」
「へ? なにそれ??」
そう言えば、紗凪にはまだ伝えていないのを思い出した。
「魂の欠片とも言いますか。ただ、直接寿命などには関係がありません。わずかな片鱗、魂の輝きを僕のような妖が顕現します。その引き出しを可能とする方から、お代金の代わりにいただくんですよ。それは、ほとんどの場合食材になります」
「へー? そんな仕組みがあったんですね?」
「引き出すことを可能とする妖は少ないでござるからな? 紗凪にはそう言う店に連れて行ってなかったゆえ」
「どーやって取り出すんですか?」
「見ててください」
美兎が両手を火坑の前に差し出して、火坑の肉球のない猫手がぽんぽんと触れてくる。
お決まりの、一瞬フラッシュをたくように、店内が白い光に包まれて。
消えた時には、少し見覚えのある白っぽい魚肉が笹の葉の上に乗っていた。
「うわ!? ぽんぽんしただけで出てきた!?……はまち??」
「いや……それは、マンボウの肉でござる!?」
「あら、季節外れだけど、珍味じゃない?」
「火坑さん、これなら」
「ええ。せっかくなので、作りましょうか?」
マンボウのカツカレー。
前回のマンボウの肉は、シンプルに串焼きでいただいたから。
翠雨に提案すると、思いっきりガッツポーズをしたのだった。