怖い、はずだと思っていたのに。
本当に、骨が好きなのか。秋保は目を爛々と輝かせていたのだった。
「…………すっごい!! 凄いですぅうう!!」
合歓が声をかける前に、秋保はぴょんぴょんとその場で跳ねたのだった。
「……怖く、ないの?」
本性のがしゃどくろのせいで、変にかすれた声になるが。秋保は気にせずに首を縦に振ったのだ。
「ちょっと、大きいのには驚きましたけど!! 失礼ですけど、骨格標本がまるまるおっきくなったんですもん!! 私は好きです!! 大好きです!!」
「だ、だいすき……って」
合歓のことではなく、がしゃどくろの方だろうが。
それでも、この本性の姿で『好き』と好印象を持たれるのがまずなかったため。
今、合歓は人化じゃなくてよかったと思った。
本性なら血肉などがないので、顔色がバレないからだ。けど、嬉しくないわけではない。むしろ。
「合歓さん、合歓さん! 触ってみてもいいですか!?」
「へ? さわ!?」
「だってだって!! リアルに骨に触れる機会ないですもん!! ね? ね?」
「あー……ああ……うん」
合歓というよりは、『がしゃどくろ』に触りたいのだろう。
少し複雑な気分にはなったが。触りたいという女性は今までひとりもいなかったので、正直言って嬉しい。
だが、足だと万が一踏んづけてはいけないので、手に乗るように促した。
「わ、わ! 乗っていいですか!?」
これまた、テーマパークのアトラクションに乗るみたいなはしゃぎっぷりだ。
全然、まったく怖がらずに合歓の骨だけの手の上に乗り。潰さないように、握り過ぎないようにと、丁寧に軽く握ってから顔の近くにまで持ち上げてやる。
だが、間違っていたのかもしれない。
秋保の、子供のように興奮して、頬が紅潮した様子が間近に見えるのだから。
そして、手の方は目の前にあるので既にペタペタと触られていた。
「すっごい、すっごーい!! 生の骨ってこんな感じなんだ?! 標本とかじゃ、プラスチックや樹脂だから冷たいし質感も違うし」
「……楽しい?」
「はい! あ、頭蓋……顔もいいです?」
「……どーぞ」
もうここまで来たら、許す以外ないだろう。
もう少し顔を近づけて、触りやすいようにしてみたが、よくなかった。
人化で言う唇。
歯の上部分をペタペタと触るのだから、なんだかむず痒くなってきたのだ。噛まないように気をつけていたが、これ以上はまずい。
さすがにくすぐったくなってきたのだった。
「あー、満足! ありがとうございました!!」
くすぐったいのを我慢していたら、秋保は満足したらしく。
もう、終わりか、と。少し寂しさを覚えたのが時間も時間なので。
送るために、秋保を下ろしてから素早く人化した。
元に戻るというわけではないのに、人化の方がやけにしっくりしたのだ。
上着と帽子を見つけて身につけていたら、離れたところに下ろしてた秋保がダッシュでこちらに来た。
「合歓さん、合歓さん!」
「……なんだい?」
怖がられていないのに、少し嬉しく感じたが。人化の合歓では物足りないと思われるだろうに。
秋保は合歓の手をいきなり掴んだのだ。
「こっちの合歓さんもですけど! 骨の合歓さんもかっこよかったです!!」
「……本気??」
「はい!! だって、イケメンさんですから骨の形状も綺麗でしたし、納得です!!」
ぶんぶんと握られた手を振りながら、頬を紅潮させているのだから本心なのだろう。
だから、合歓も感極まってしまい。
思わず、秋保の手を引いて、胸に抱き込んでしまった。
「……ありがとう」
この人間の子が、欲しい。
好きになったから、欲しい。
合歓は、あの猫人の言っていた『好きになった相手』のことがよくわかったのだ。
本当に、骨が好きなのか。秋保は目を爛々と輝かせていたのだった。
「…………すっごい!! 凄いですぅうう!!」
合歓が声をかける前に、秋保はぴょんぴょんとその場で跳ねたのだった。
「……怖く、ないの?」
本性のがしゃどくろのせいで、変にかすれた声になるが。秋保は気にせずに首を縦に振ったのだ。
「ちょっと、大きいのには驚きましたけど!! 失礼ですけど、骨格標本がまるまるおっきくなったんですもん!! 私は好きです!! 大好きです!!」
「だ、だいすき……って」
合歓のことではなく、がしゃどくろの方だろうが。
それでも、この本性の姿で『好き』と好印象を持たれるのがまずなかったため。
今、合歓は人化じゃなくてよかったと思った。
本性なら血肉などがないので、顔色がバレないからだ。けど、嬉しくないわけではない。むしろ。
「合歓さん、合歓さん! 触ってみてもいいですか!?」
「へ? さわ!?」
「だってだって!! リアルに骨に触れる機会ないですもん!! ね? ね?」
「あー……ああ……うん」
合歓というよりは、『がしゃどくろ』に触りたいのだろう。
少し複雑な気分にはなったが。触りたいという女性は今までひとりもいなかったので、正直言って嬉しい。
だが、足だと万が一踏んづけてはいけないので、手に乗るように促した。
「わ、わ! 乗っていいですか!?」
これまた、テーマパークのアトラクションに乗るみたいなはしゃぎっぷりだ。
全然、まったく怖がらずに合歓の骨だけの手の上に乗り。潰さないように、握り過ぎないようにと、丁寧に軽く握ってから顔の近くにまで持ち上げてやる。
だが、間違っていたのかもしれない。
秋保の、子供のように興奮して、頬が紅潮した様子が間近に見えるのだから。
そして、手の方は目の前にあるので既にペタペタと触られていた。
「すっごい、すっごーい!! 生の骨ってこんな感じなんだ?! 標本とかじゃ、プラスチックや樹脂だから冷たいし質感も違うし」
「……楽しい?」
「はい! あ、頭蓋……顔もいいです?」
「……どーぞ」
もうここまで来たら、許す以外ないだろう。
もう少し顔を近づけて、触りやすいようにしてみたが、よくなかった。
人化で言う唇。
歯の上部分をペタペタと触るのだから、なんだかむず痒くなってきたのだ。噛まないように気をつけていたが、これ以上はまずい。
さすがにくすぐったくなってきたのだった。
「あー、満足! ありがとうございました!!」
くすぐったいのを我慢していたら、秋保は満足したらしく。
もう、終わりか、と。少し寂しさを覚えたのが時間も時間なので。
送るために、秋保を下ろしてから素早く人化した。
元に戻るというわけではないのに、人化の方がやけにしっくりしたのだ。
上着と帽子を見つけて身につけていたら、離れたところに下ろしてた秋保がダッシュでこちらに来た。
「合歓さん、合歓さん!」
「……なんだい?」
怖がられていないのに、少し嬉しく感じたが。人化の合歓では物足りないと思われるだろうに。
秋保は合歓の手をいきなり掴んだのだ。
「こっちの合歓さんもですけど! 骨の合歓さんもかっこよかったです!!」
「……本気??」
「はい!! だって、イケメンさんですから骨の形状も綺麗でしたし、納得です!!」
ぶんぶんと握られた手を振りながら、頬を紅潮させているのだから本心なのだろう。
だから、合歓も感極まってしまい。
思わず、秋保の手を引いて、胸に抱き込んでしまった。
「……ありがとう」
この人間の子が、欲しい。
好きになったから、欲しい。
合歓は、あの猫人の言っていた『好きになった相手』のことがよくわかったのだ。