あれから幾日か過ぎて。
なんと、合歓が秋保に本性を見せることになったそうだ。
「骨が……大好きですか」
美兎は梅酒のロックをちびりちびりと飲みながら、合歓の話を聞いていた。
合歓は合歓で、あの日とは違って一滴も酒を飲んでいないようだった。それどころか緊張しまくっている様子だ。
「……うん。俺の本性話しても……可愛くはしゃぐくらいだったし」
「良かったではないですか? 興味を持ってくださる女性は貴重ですよ?」
「そうだけどさ。大将さーん……俺の本性、がしゃどくろだよ? でかいだけの骨だよ? 全然カッコよくもないし」
「けど……笹河原さんは見たいって言ってくれたんじゃないですか?」
「……そうなんだよ。美兎ちゃんが言った通り。けど、俺自信ないぃい」
本当に、火坑が以前話してくれたように、プレイボーイだったのだろうか。
今日の様子を見る限り、ただの自信のない男性にしか見えない。
とは言っても、好きな相手に自信を持つタイプの方が少ないから、無理はないと言うか。
「こーんばんは!」
と言っていたら、秋保が元気いっぱいにやってきた。道中怖い思いをしたはずなのに、全然元気だったのだ。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは! あ、湖沼さんも!」
「こんばんは。今日は大丈夫そうですね?」
「はい。やっぱり、妖怪さんは怖いけど。合歓さんの骨妖怪さんの姿が見れるって思ったら、もう!!」
合歓から聞いただけでなく、本当に骨が大好きなのだろう。
見た目に寄らないと言うか、人の趣味をとやかく言うつもりはないが、変わった趣味なんだなと思うことにした。
「そ……そう?」
こちらは相変わらず、一目惚れの相手が来たとわかると緊張しまくりであった。
とりあえず秋保は、この前と同じように美兎と合歓の間にある席に座った。
「はい!……あー、今日も疲れた。お腹ぺこぺこですぅ」
火坑からおしぼりを受け取ったあとに、秋保は溶けそうな勢いでカウンターに突っ伏した。
「ふふ。たくさん召し上がっていってください。この間のように、心の欠片をいただけましたら、代金がわりになりますので」
「わーい! 出します出します! えっと、こうでしたっけ?」
秋保が両手を差し出すと、火坑がぽんぽんと手を重ねて。一瞬光ったかと思えば、出てきたのは骨のアクセサリー。
もう一度、火坑が軽く叩けば。
出てきたのは、綺麗で大きい笹の葉に乗った手羽元の肉だった。
「おや、手羽元ですか?」
「ウィングスティックですね!」
「ええ。そうですね……時短で、煮付けにでもしましょうか?」
「おお! 煮付け!」
とりあえず、メニューが決まったので秋保も美兎と同じ梅酒のロックを飲むことになった。
やはり、火坑の手製だからか、秋保もすぐに気に入っていた。
「そう言えば、笹河原さんはおいくつなんですか?」
「あ、二十四です!」
「今年で?」
「ついこの前ですね?」
「じゃあ、同い年だね? 私も二十四」
「へー? あ、じゃあ名前で呼び合おうよ?」
「いいよ、秋保ちゃん」
「うん、美兎ちゃん!」
などと和んでいたら、合歓がハンカチを噛むような渋い表情が見えたので、これには苦笑いするしか出来なかった。