骨だけの妖。
ファンタジーだと、スケルトンとも言われるような。
本当に、そんな妖がいるだなんって思わず。
けれど、この世界に行き来しているだけで、十分ファンタジックを満喫していたな、と美兎は思い直した。
そして、ことごとく振られまくっていると言う『がしゃどくろ』の合歓。酒を浴びるように呑んでいたせいか、今は少し酔って寝そうになっていた。
「いいな〜……いいなぁ。大将さんは、美兎ちゃんみたいに可愛くて良い恋人出来てぇ」
船を漕ぎ始めてもいるが、声をかけられた火坑は料理をしながらにっこりと笑うだけだった。
「これ以上、料理以外はお出し出来ません」
「うぇ〜……いーいじゃぁん?」
「少し前の僕の話聞いていましたか?」
「けど、飲みたいんだもーん」
妖の人化ゆえに、整った顔立ち。
イケメン以上に美形。
けど、美兎には火坑が見せてくれた響也の美形バージョンがあるので、当然比較してしまうが。
それでも、眩しい程の美形の本性が骨だけだとわかると。人間もだが、妖でも怖いものは怖いだろう。美兎は、少しだけ火坑が猫人でよかったと安心してしまった。
「でも、お酒の飲み過ぎは良くないと思いますよ? 明日に響いちゃ大変ですし」
「うう……美兎ちゃん優しい。大将さん、すごい! こんないい子どこで見つけたの〜!?」
「見つけたと言いますか……」
「……私、が飲み過ぎて界隈に迷い込んでしまったので」
助けてもらった、と続けようとしたら。引き戸が開いたのだった。
「ここなら……あ、あれ!?」
入ってきたのは、女性。
しかも、妖という雰囲気ではなく人間の女性に見えた。
そして、美兎と目が合うと、ブワっと言う勢いで涙を流したのだった。
「やっと、人間さんだ!! やっとおんなじ人がいたああああ!?」
のっぺらぼうの芙美のようなふわふわした雰囲気なのに、行動的なのか。美兎にそう言うなり抱きついてきた。
「え……えっと?」
「ここどこ!? 異世界!? パラレルワールド!? 私どこに来ちゃったんですか!?」
「お、おおお、落ち着きましょ? とりあえず座りましょう??」
「ふぁい〜〜……」
とにかく、話を聞くためにもと。彼女を美兎の隣に座らせた。だいたいの事情は分かったが、どうやら知らない間にこの界隈に迷い込んだ感じだ。
「私は湖沼美兎です。あなたは……?」
「え、えっと……笹河原秋保と言います。……ちょっと、近道しようとしたら。変な人達がいるとこに迷い込んじゃって」
「ここは、妖達が暮らす界隈と呼ばれている異空間です。笹河原さんは、手順を踏んで迷い込んでしまったのでしょう」
「ね、猫!?」
「僕は火坑と言います。ここの店主です」
「てん……ちょーさん?」
「ええ」
お茶を出されたが、秋保は最初じーっと見つめていたけれど、喉が渇いていたのかゆっくりと飲んで息を吐いた。
「おいしー……!」
「しかし、手順を踏まれたとは言えこの辺りまで来られるとは。笹河原さんには見鬼の才能がおありかもしれないですね?」
「けんき?」
「僕やここいらの妖……えっと、妖怪などを視ることが出来る才能ですよ。こちらのお客さんは視えますか?」
と、さっきから一言もしゃべらない合歓を見ると。ぽかーんと口を開けていたのだった。
まさか、と美兎はもう一度秋保を見た。
もちもちと柔らかそうな白い肌。
艶々プルプルの唇。
リスのように大きな可愛らしい目に手入れされた眉。まつ毛はつけまつ毛を装着していないようだが、それでも長い。
髪は染めているのか茶色だが、それでも柔らかそうで。
いわゆる、守ってあげたい感じの女性だ。歳までは聞いていないが、合歓に比べたら美兎より歳上だとしても子供同然だろう。
それでも、合歓はいわゆる一目惚れをしてしまったようだ。
「え!? こっちのイケメンさんも妖怪!?」
「お、お、おう。……一応、だけど」
「ぜーんぜん、見えないですぅ!? こんなカッコいいのに……」
「そ、そうかな?」
完全に一目惚れ。
ちらっと、火坑に目配せしたら、苦笑いされてしまった。
とここで。
秋保から、可愛らしい腹の虫の音が聞こえてきた。
「……ご飯まだでした」
「では、ここで食べていかれませんか? 御伽話にあるような、食べたら元の世界に戻れませんとかはないので」
「ほんとですか!?」
というわけで、秋保は客の一員になったわけである。
ファンタジーだと、スケルトンとも言われるような。
本当に、そんな妖がいるだなんって思わず。
けれど、この世界に行き来しているだけで、十分ファンタジックを満喫していたな、と美兎は思い直した。
そして、ことごとく振られまくっていると言う『がしゃどくろ』の合歓。酒を浴びるように呑んでいたせいか、今は少し酔って寝そうになっていた。
「いいな〜……いいなぁ。大将さんは、美兎ちゃんみたいに可愛くて良い恋人出来てぇ」
船を漕ぎ始めてもいるが、声をかけられた火坑は料理をしながらにっこりと笑うだけだった。
「これ以上、料理以外はお出し出来ません」
「うぇ〜……いーいじゃぁん?」
「少し前の僕の話聞いていましたか?」
「けど、飲みたいんだもーん」
妖の人化ゆえに、整った顔立ち。
イケメン以上に美形。
けど、美兎には火坑が見せてくれた響也の美形バージョンがあるので、当然比較してしまうが。
それでも、眩しい程の美形の本性が骨だけだとわかると。人間もだが、妖でも怖いものは怖いだろう。美兎は、少しだけ火坑が猫人でよかったと安心してしまった。
「でも、お酒の飲み過ぎは良くないと思いますよ? 明日に響いちゃ大変ですし」
「うう……美兎ちゃん優しい。大将さん、すごい! こんないい子どこで見つけたの〜!?」
「見つけたと言いますか……」
「……私、が飲み過ぎて界隈に迷い込んでしまったので」
助けてもらった、と続けようとしたら。引き戸が開いたのだった。
「ここなら……あ、あれ!?」
入ってきたのは、女性。
しかも、妖という雰囲気ではなく人間の女性に見えた。
そして、美兎と目が合うと、ブワっと言う勢いで涙を流したのだった。
「やっと、人間さんだ!! やっとおんなじ人がいたああああ!?」
のっぺらぼうの芙美のようなふわふわした雰囲気なのに、行動的なのか。美兎にそう言うなり抱きついてきた。
「え……えっと?」
「ここどこ!? 異世界!? パラレルワールド!? 私どこに来ちゃったんですか!?」
「お、おおお、落ち着きましょ? とりあえず座りましょう??」
「ふぁい〜〜……」
とにかく、話を聞くためにもと。彼女を美兎の隣に座らせた。だいたいの事情は分かったが、どうやら知らない間にこの界隈に迷い込んだ感じだ。
「私は湖沼美兎です。あなたは……?」
「え、えっと……笹河原秋保と言います。……ちょっと、近道しようとしたら。変な人達がいるとこに迷い込んじゃって」
「ここは、妖達が暮らす界隈と呼ばれている異空間です。笹河原さんは、手順を踏んで迷い込んでしまったのでしょう」
「ね、猫!?」
「僕は火坑と言います。ここの店主です」
「てん……ちょーさん?」
「ええ」
お茶を出されたが、秋保は最初じーっと見つめていたけれど、喉が渇いていたのかゆっくりと飲んで息を吐いた。
「おいしー……!」
「しかし、手順を踏まれたとは言えこの辺りまで来られるとは。笹河原さんには見鬼の才能がおありかもしれないですね?」
「けんき?」
「僕やここいらの妖……えっと、妖怪などを視ることが出来る才能ですよ。こちらのお客さんは視えますか?」
と、さっきから一言もしゃべらない合歓を見ると。ぽかーんと口を開けていたのだった。
まさか、と美兎はもう一度秋保を見た。
もちもちと柔らかそうな白い肌。
艶々プルプルの唇。
リスのように大きな可愛らしい目に手入れされた眉。まつ毛はつけまつ毛を装着していないようだが、それでも長い。
髪は染めているのか茶色だが、それでも柔らかそうで。
いわゆる、守ってあげたい感じの女性だ。歳までは聞いていないが、合歓に比べたら美兎より歳上だとしても子供同然だろう。
それでも、合歓はいわゆる一目惚れをしてしまったようだ。
「え!? こっちのイケメンさんも妖怪!?」
「お、お、おう。……一応、だけど」
「ぜーんぜん、見えないですぅ!? こんなカッコいいのに……」
「そ、そうかな?」
完全に一目惚れ。
ちらっと、火坑に目配せしたら、苦笑いされてしまった。
とここで。
秋保から、可愛らしい腹の虫の音が聞こえてきた。
「……ご飯まだでした」
「では、ここで食べていかれませんか? 御伽話にあるような、食べたら元の世界に戻れませんとかはないので」
「ほんとですか!?」
というわけで、秋保は客の一員になったわけである。