神となった人間からの施し。
元飼い主だった菅原道真。通称、菅公。
結界の中に、美兎と火坑を招き入れてから装いを本来の装束に戻して。
可愛らしく慌てる美兎を、驚かせているばかりだった。
「……こちらにおいで?」
閉じた扇子で来い来いと手招きしたので、火坑は美兎の手を軽く引いた。
「行きましょう、美兎さん?」
「は、はい……」
「大丈夫。終わったら、元の時間に戻してあげるよ」
さあ、こっちだ。と、案内された場所は社の中で。やっぱり誰もいなくて、火坑達だけだった。
道真には、開けた舞台のような広間に到着するなり。木と布で出来た椅子に座るように言われた。火坑はただの猫だった頃は、たまにこのような椅子の上で昼寝をしていたと思い出した。
まだこの空間に慣れていない美兎はそわそわしていたが、そんな様子もとても可愛らしかった。
キョロキョロと首を動かしている彼女を見ていたら、道真が榊の枝で作られた玉串を持ってきた。
二本を美兎と火坑にそれぞれ渡して、これからの作法を教えてくれた。
「えっ……と、えっと」
慣れない神事の儀式の作法に、美兎は戸惑っていたが火坑が教えればわかったようだ。
「私はヒトから成った神だが、祝詞は特にない。君達が終えたらすぐに行おう」
と言われたので、美兎とタイミングを合わせて玉串を回して。最後に道真の横にある台の上に、それぞれ置いたのだった。
「……険しき道がないとは言わん。だが、君達が手を取り合えば、その道が越えられると言えよう。幾年経ようとも、君達の絆は解かれまい」
道真が扇子を使いながら、舞うように舞台を歩くと。火坑の目には扇子から紫色の粒が生じ、こちらに浮遊してきたら美兎と火坑に降り注いできた。
「……綺麗」
空木や滝夜叉姫のお陰で、霊力と妖力が高まった彼女にも見えていたのだろう。
ちらっと横を見れば、まるで少女のように顔を赤らめていた。
光が全部二人に降り注いだら、道真はゆっくりとまた扇子を閉じた。
「簡易に見えて強固。これで、妖などからも引き離されはしない。未来永劫とまではいかないが、余程の神でなければ大丈夫だよ?」
「……大神はどうでしょうね?」
「彼なら、君達を応援しているから大丈夫だと思うよ?」
「……そうですか」
それならよかった、と火坑は安心出来た。何気に、美兎は妖や神には好かれているからだ。
だが、生涯の伴侶と認めた彼女を、誰にも渡すつもりはない。
儀式を終えて、社から元の玉砂利の参道に戻ったら。道真は手を振りながら扇子を開いて、彼は姿を消して美兎と火坑の元いた時間に戻したのだった。
「わ、わ!?」
「美兎さん、あまり驚かれないように」
「そ、ですけど」
「ふふ。誠さんの粋なはからいでしょうね?」
火坑の目に飛び込んできたのは、まだ花嫁行列が終わっていない列だった。
もし、美兎と将来結婚式をする予定になったら。
どう言う式で開くかはわからない。
まだまだ数年以上先なので、ゆっくりと決めて行けばいい。
とりあえず、道真に直接会ったが参拝はきちんとしようと、美兎の手を握ってから参拝客の列に混ざったのだった。
元飼い主だった菅原道真。通称、菅公。
結界の中に、美兎と火坑を招き入れてから装いを本来の装束に戻して。
可愛らしく慌てる美兎を、驚かせているばかりだった。
「……こちらにおいで?」
閉じた扇子で来い来いと手招きしたので、火坑は美兎の手を軽く引いた。
「行きましょう、美兎さん?」
「は、はい……」
「大丈夫。終わったら、元の時間に戻してあげるよ」
さあ、こっちだ。と、案内された場所は社の中で。やっぱり誰もいなくて、火坑達だけだった。
道真には、開けた舞台のような広間に到着するなり。木と布で出来た椅子に座るように言われた。火坑はただの猫だった頃は、たまにこのような椅子の上で昼寝をしていたと思い出した。
まだこの空間に慣れていない美兎はそわそわしていたが、そんな様子もとても可愛らしかった。
キョロキョロと首を動かしている彼女を見ていたら、道真が榊の枝で作られた玉串を持ってきた。
二本を美兎と火坑にそれぞれ渡して、これからの作法を教えてくれた。
「えっ……と、えっと」
慣れない神事の儀式の作法に、美兎は戸惑っていたが火坑が教えればわかったようだ。
「私はヒトから成った神だが、祝詞は特にない。君達が終えたらすぐに行おう」
と言われたので、美兎とタイミングを合わせて玉串を回して。最後に道真の横にある台の上に、それぞれ置いたのだった。
「……険しき道がないとは言わん。だが、君達が手を取り合えば、その道が越えられると言えよう。幾年経ようとも、君達の絆は解かれまい」
道真が扇子を使いながら、舞うように舞台を歩くと。火坑の目には扇子から紫色の粒が生じ、こちらに浮遊してきたら美兎と火坑に降り注いできた。
「……綺麗」
空木や滝夜叉姫のお陰で、霊力と妖力が高まった彼女にも見えていたのだろう。
ちらっと横を見れば、まるで少女のように顔を赤らめていた。
光が全部二人に降り注いだら、道真はゆっくりとまた扇子を閉じた。
「簡易に見えて強固。これで、妖などからも引き離されはしない。未来永劫とまではいかないが、余程の神でなければ大丈夫だよ?」
「……大神はどうでしょうね?」
「彼なら、君達を応援しているから大丈夫だと思うよ?」
「……そうですか」
それならよかった、と火坑は安心出来た。何気に、美兎は妖や神には好かれているからだ。
だが、生涯の伴侶と認めた彼女を、誰にも渡すつもりはない。
儀式を終えて、社から元の玉砂利の参道に戻ったら。道真は手を振りながら扇子を開いて、彼は姿を消して美兎と火坑の元いた時間に戻したのだった。
「わ、わ!?」
「美兎さん、あまり驚かれないように」
「そ、ですけど」
「ふふ。誠さんの粋なはからいでしょうね?」
火坑の目に飛び込んできたのは、まだ花嫁行列が終わっていない列だった。
もし、美兎と将来結婚式をする予定になったら。
どう言う式で開くかはわからない。
まだまだ数年以上先なので、ゆっくりと決めて行けばいい。
とりあえず、道真に直接会ったが参拝はきちんとしようと、美兎の手を握ってから参拝客の列に混ざったのだった。