着物で歩くのは、初詣の時もそうだったが結構大変だった。
真穂には動きやすい草履を選んでもらったが、それでも着慣れない着物姿と言うのは疲れるものだ。
隣にいる火坑はよく平気でいられるのが、少し羨ましかった。
「大丈夫ですか? 美兎さん」
その疲れが顔に出てたのか、火坑が顔を覗いてきた。
「……すみません。少し、草履が」
「僕も気づかずすみません。初詣でも、大変そうでしたのに」
「いいえ! デートは本当に楽しいです!」
「ふふ。わかっていますよ?」
響也の顔で、火坑はにっこりと微笑んでくれた。
「響也さんは平気なんですね?」
「普段から草履なもので」
「あ、気づかなかったです」
店で会う時は、あまり足元は見ないものだから。
彼女として、少し申し訳ないな、と思っていたら。火坑に髪をぽんぽんと撫でられた。
「ふふ。慣れの差はどうしようもないですからね? 真穂さんに連絡してから、彼女の家に行きましょうか?」
「え?」
「着物だけ返しに行きましょう? そのあと、僕の家でゆっくりしませんか?」
「けど。この後も案内してくださるんじゃ?」
「辛い思いをされてまで、は本意じゃないです。大丈夫ですよ? デートはこれっきりじゃありませんから」
「……はい」
少し子供みたいなわがままを言ってしまった。
けれど、火坑は優しく諭してくれるだけで、否定はされなかった。
その優しさに涙が出そうだったが、ぐっと堪えて。真穂に連絡したら、『了解』と返事がもらえたので、街の端に頑張って移動してから火坑の妖術で移動した。
到着すると、マンションの下で真穂が待っててくれていた。
「お疲れ様」
「着物、ありがと」
「草履が大変なら、次はブーツにしてみる?」
「ブーツ?」
「ほら、ハイカラさんとかが着てる感じ」
「おお!」
次回もあるのなら、美兎は期待が膨らんできたのだった。
とりあえず、美兎が着替えている間に火坑には別室で待っててもらい。
朝来た通りの服装に戻ったら、重い着物からの解放感に少しホッと出来た。
「おつかれー」
「着物って、筋トレになりそうだね……?」
「ま、ねー? あとちょっとで京都行くんだし、もうちょい慣れないとね?」
「……うん」
四月。
実は美兎の誕生日が近いのだが、まだ火坑には伝えていない。
プレゼントをねだるだなんて、可愛くないことだと元彼に言われたことがあったので控えていたが。
火坑は違う。
彼の誕生日も去年祝ったし、美兎の方も、と思っているかもしれない。
着替え終わって、ひと息ついたら彼の自宅まで手を繋いで歩き。
彼の家に着く直前に、言ってみることにした。
「火坑……さん」
「はい?」
「……私。来月の五日が誕生日なんです」
「え」
当然驚かせてしまい、火坑は鍵を開ける手を止めてしまった。
迷惑だと思いかけていたら、彼は鍵を急いで開けて。美兎の手を引っ張ったと思えば、中に入って扉を閉めたらすぐに美兎を抱きしめたのだった。
「火坑さん……?」
苦しい一歩手前の力加減だったので、美兎はドキドキしっぱなしだったが。
火坑は猫人には戻していない響也の顔のまま、大きく息を吐いた。
「僕は大馬鹿者です」
「え?」
「美兎さんの……彼女の誕生日を聞き出す勇気を持っていませんでした」
「わ、私が言わなかっただけで!」
「けど、残り時間が少ないです。……美兎さん、今思いつきましたが。誕生日プレゼントを旅行にしませんか? 日にちは流石に別日になりますが」
「! はい!」
突然の思いつきでも、美兎のことを考えてくれていたので。
美兎は火坑に抱きつき、その後、彼からは甘い甘いキスをもらったのだった。
真穂には動きやすい草履を選んでもらったが、それでも着慣れない着物姿と言うのは疲れるものだ。
隣にいる火坑はよく平気でいられるのが、少し羨ましかった。
「大丈夫ですか? 美兎さん」
その疲れが顔に出てたのか、火坑が顔を覗いてきた。
「……すみません。少し、草履が」
「僕も気づかずすみません。初詣でも、大変そうでしたのに」
「いいえ! デートは本当に楽しいです!」
「ふふ。わかっていますよ?」
響也の顔で、火坑はにっこりと微笑んでくれた。
「響也さんは平気なんですね?」
「普段から草履なもので」
「あ、気づかなかったです」
店で会う時は、あまり足元は見ないものだから。
彼女として、少し申し訳ないな、と思っていたら。火坑に髪をぽんぽんと撫でられた。
「ふふ。慣れの差はどうしようもないですからね? 真穂さんに連絡してから、彼女の家に行きましょうか?」
「え?」
「着物だけ返しに行きましょう? そのあと、僕の家でゆっくりしませんか?」
「けど。この後も案内してくださるんじゃ?」
「辛い思いをされてまで、は本意じゃないです。大丈夫ですよ? デートはこれっきりじゃありませんから」
「……はい」
少し子供みたいなわがままを言ってしまった。
けれど、火坑は優しく諭してくれるだけで、否定はされなかった。
その優しさに涙が出そうだったが、ぐっと堪えて。真穂に連絡したら、『了解』と返事がもらえたので、街の端に頑張って移動してから火坑の妖術で移動した。
到着すると、マンションの下で真穂が待っててくれていた。
「お疲れ様」
「着物、ありがと」
「草履が大変なら、次はブーツにしてみる?」
「ブーツ?」
「ほら、ハイカラさんとかが着てる感じ」
「おお!」
次回もあるのなら、美兎は期待が膨らんできたのだった。
とりあえず、美兎が着替えている間に火坑には別室で待っててもらい。
朝来た通りの服装に戻ったら、重い着物からの解放感に少しホッと出来た。
「おつかれー」
「着物って、筋トレになりそうだね……?」
「ま、ねー? あとちょっとで京都行くんだし、もうちょい慣れないとね?」
「……うん」
四月。
実は美兎の誕生日が近いのだが、まだ火坑には伝えていない。
プレゼントをねだるだなんて、可愛くないことだと元彼に言われたことがあったので控えていたが。
火坑は違う。
彼の誕生日も去年祝ったし、美兎の方も、と思っているかもしれない。
着替え終わって、ひと息ついたら彼の自宅まで手を繋いで歩き。
彼の家に着く直前に、言ってみることにした。
「火坑……さん」
「はい?」
「……私。来月の五日が誕生日なんです」
「え」
当然驚かせてしまい、火坑は鍵を開ける手を止めてしまった。
迷惑だと思いかけていたら、彼は鍵を急いで開けて。美兎の手を引っ張ったと思えば、中に入って扉を閉めたらすぐに美兎を抱きしめたのだった。
「火坑さん……?」
苦しい一歩手前の力加減だったので、美兎はドキドキしっぱなしだったが。
火坑は猫人には戻していない響也の顔のまま、大きく息を吐いた。
「僕は大馬鹿者です」
「え?」
「美兎さんの……彼女の誕生日を聞き出す勇気を持っていませんでした」
「わ、私が言わなかっただけで!」
「けど、残り時間が少ないです。……美兎さん、今思いつきましたが。誕生日プレゼントを旅行にしませんか? 日にちは流石に別日になりますが」
「! はい!」
突然の思いつきでも、美兎のことを考えてくれていたので。
美兎は火坑に抱きつき、その後、彼からは甘い甘いキスをもらったのだった。