不思議な縁がこの店にはある。
ぬらりひょんの間半は、本当に度々しか訪れていないのだが。
今日の客人は、皆タイプは違うが可愛らしい人間の女性ばかり。
中でも、今日界隈デビューしたばかりの田城と言う女性。
他の二人に比べるとかなり明るくて、好奇心旺盛。
彼女が、最近界隈では話題になっている、火車の風吹と付き合うことになった。あの根暗でメカクレな陰湿野郎が、まさか、とは思ったりもしたけれど。
対照的な女性を想うことになったとは。まったく、ヒトではなくとも、ヒトが好きなのに、ヒトの臭いはダメだったのが。
大した進歩だ。かく言う、間半の孫も似たような感じではあったが。
今日は久しぶりにひ孫の顔を見に行けたので、上機嫌だった。かつて、総大将の孫とは言え、ぬらりひょんが人間とどうのこうの言われたりもしたが。
十年と短い期間経った今では、その騒動なども落ち着いている。そして、半妖となったひ孫はぬらりひょんの血を濃く受け継いでいるので、どちらかと言えば妖寄りだ。
彼女達が将来的に、妖達と契るかは未だ不明ではあるが。少なくとも、沓木と言う女性は確実だろう。多少濃いが、赤鬼の妖気が身体に染み付いているからだが。
「ごめんください」
猪口を傾けていたら、見知った声と妖気を感じたのだ。
「櫂斗」
何故、今考えていた孫がここに。
しかも、一人じゃなくて小さな影も。
「じぃじ!」
「……咲穂まで」
可愛い可愛い、ひ孫の少女が。
きちんとした格好で間半のところまで歩いて来ようとしていた。
「わ、可愛い!」
「さっき言ってらした、ひ孫ちゃん?」
「ちっちゃい!」
咲穂を抱き上げると、女性達は可愛い彼女を見てはしゃいでくれたのだった。
「すみません、お祖父様。咲穂がどうしても今あなた様に会いたいと泣きわめくもので」
「……そうか。ダメだよ、咲穂? じぃじとはいつでも会えるんだから、お父さんを困らせてはいけないよ?」
「むぅ〜、じぃじに会いっちゃかったんだもん!」
「嬉しいけど、もうお前は寝る時間じゃないか」
「にゅ〜……」
「まあまあ。可愛いらしいわがままではないですか? 櫂斗さんもよかったら、オム焼きそばはいかがです? 咲穂ちゃんも」
「あ。ありがとうございます」
席はカウンターにあと一席空いてたので、櫂斗が座り。咲穂は間半の膝に座ったのだ。そしてすこぶる上機嫌になってくれるのだから、許してしまうのは仕方がないだろう。
「お待たせ致しました。美兎さん達からいただいた心の欠片で作りました、オム焼きそばです」
艶々のオムレツ風卵焼きに、ソースにマヨネーズに鰹節。
湯気が立っていて、とても熱そうだ。それぞれの前に置かれると、咲穂は首をひねったようだ。
「じぃじ。これなーに?」
「これはご飯だよ?」
「ごはん?」
「まだ、咲穂には焼きそばは食べさせていませんからね?」
「咲穂、見ててごらん?」
間半が箸でオムレツを割ると、中からはこれまた美味そうな焼きそばが顔を出してきたのだった。
まずひと口、と間半が食べれば。
さすがは心の欠片。上質な霊力を感じつつも味は一級品の焼きそば。麺の硬さも、ソースの濃さも。卵と合わせれば、ちょうど良い調和を口に与えてくれたのだった。
「じぃじ、咲もー」
「はいはい。熱いから少しお待ち?」
息を吹きかけて、程よく冷ましてから口に入れてあげたら。
「おいちー!!」
くりんと振り返りながらも、笑顔が全開で。
ああ、ひ孫もやはりいいものだ、と思わずにはいられなかった。
「咲穂。それはお祖父様のご飯だから、あんまり食べ過ぎてはいけないよ? 明日の朝ご飯が食べれなくなるよ?」
「はーい」
「咲穂ちゃんはりんごはお好きですか?」
「? はい。普通には」
「でしたら、長野の蜜りんごがあるので。サービスしますよ」
「お気遣い、ありがとうございます」
そして、咲穂は出されたりんごに満足したら眠ってしまい。
まだ飲みたりないが、彼女達は彼女達で時間を過ごしてもらおうかと、ぬらりひょん一行として帰宅することにしたのだった。
ぬらりひょんの間半は、本当に度々しか訪れていないのだが。
今日の客人は、皆タイプは違うが可愛らしい人間の女性ばかり。
中でも、今日界隈デビューしたばかりの田城と言う女性。
他の二人に比べるとかなり明るくて、好奇心旺盛。
彼女が、最近界隈では話題になっている、火車の風吹と付き合うことになった。あの根暗でメカクレな陰湿野郎が、まさか、とは思ったりもしたけれど。
対照的な女性を想うことになったとは。まったく、ヒトではなくとも、ヒトが好きなのに、ヒトの臭いはダメだったのが。
大した進歩だ。かく言う、間半の孫も似たような感じではあったが。
今日は久しぶりにひ孫の顔を見に行けたので、上機嫌だった。かつて、総大将の孫とは言え、ぬらりひょんが人間とどうのこうの言われたりもしたが。
十年と短い期間経った今では、その騒動なども落ち着いている。そして、半妖となったひ孫はぬらりひょんの血を濃く受け継いでいるので、どちらかと言えば妖寄りだ。
彼女達が将来的に、妖達と契るかは未だ不明ではあるが。少なくとも、沓木と言う女性は確実だろう。多少濃いが、赤鬼の妖気が身体に染み付いているからだが。
「ごめんください」
猪口を傾けていたら、見知った声と妖気を感じたのだ。
「櫂斗」
何故、今考えていた孫がここに。
しかも、一人じゃなくて小さな影も。
「じぃじ!」
「……咲穂まで」
可愛い可愛い、ひ孫の少女が。
きちんとした格好で間半のところまで歩いて来ようとしていた。
「わ、可愛い!」
「さっき言ってらした、ひ孫ちゃん?」
「ちっちゃい!」
咲穂を抱き上げると、女性達は可愛い彼女を見てはしゃいでくれたのだった。
「すみません、お祖父様。咲穂がどうしても今あなた様に会いたいと泣きわめくもので」
「……そうか。ダメだよ、咲穂? じぃじとはいつでも会えるんだから、お父さんを困らせてはいけないよ?」
「むぅ〜、じぃじに会いっちゃかったんだもん!」
「嬉しいけど、もうお前は寝る時間じゃないか」
「にゅ〜……」
「まあまあ。可愛いらしいわがままではないですか? 櫂斗さんもよかったら、オム焼きそばはいかがです? 咲穂ちゃんも」
「あ。ありがとうございます」
席はカウンターにあと一席空いてたので、櫂斗が座り。咲穂は間半の膝に座ったのだ。そしてすこぶる上機嫌になってくれるのだから、許してしまうのは仕方がないだろう。
「お待たせ致しました。美兎さん達からいただいた心の欠片で作りました、オム焼きそばです」
艶々のオムレツ風卵焼きに、ソースにマヨネーズに鰹節。
湯気が立っていて、とても熱そうだ。それぞれの前に置かれると、咲穂は首をひねったようだ。
「じぃじ。これなーに?」
「これはご飯だよ?」
「ごはん?」
「まだ、咲穂には焼きそばは食べさせていませんからね?」
「咲穂、見ててごらん?」
間半が箸でオムレツを割ると、中からはこれまた美味そうな焼きそばが顔を出してきたのだった。
まずひと口、と間半が食べれば。
さすがは心の欠片。上質な霊力を感じつつも味は一級品の焼きそば。麺の硬さも、ソースの濃さも。卵と合わせれば、ちょうど良い調和を口に与えてくれたのだった。
「じぃじ、咲もー」
「はいはい。熱いから少しお待ち?」
息を吹きかけて、程よく冷ましてから口に入れてあげたら。
「おいちー!!」
くりんと振り返りながらも、笑顔が全開で。
ああ、ひ孫もやはりいいものだ、と思わずにはいられなかった。
「咲穂。それはお祖父様のご飯だから、あんまり食べ過ぎてはいけないよ? 明日の朝ご飯が食べれなくなるよ?」
「はーい」
「咲穂ちゃんはりんごはお好きですか?」
「? はい。普通には」
「でしたら、長野の蜜りんごがあるので。サービスしますよ」
「お気遣い、ありがとうございます」
そして、咲穂は出されたりんごに満足したら眠ってしまい。
まだ飲みたりないが、彼女達は彼女達で時間を過ごしてもらおうかと、ぬらりひょん一行として帰宅することにしたのだった。