田城真衣は絶望を味わっていた。
いや、普段が悪いのだ。怪我まではいかないが、料理に関してここまで不器用だとは思わず。
ワンルームのキッチンに山積みになってしまった、失敗作達をどうすればいいのか。やはり、同期の湖沼美兎にも協力してもらえばよかった。
けれど、彼女は今日は用事があるのでダメだった。多分だが、休み前に言ってた二年先輩の沓木桂那との用事。
何故、真衣は除け者だろうか。少し悔しいが、悔いても遅い。とりあえず片付けを頑張ってから、インスタントのコーヒーで失敗作のお菓子を片付けることにした。
「……あ。味は悪くない?」
味覚音痴ではないが、外食が多い真衣の舌でも受け付けられる味だった。
だが、これらの成功作を渡す予定だった、好きになった人。不動侑には渡せれない。
いくらポジティブ人間の真衣でも、節度くらいは弁えている。そこまで馬鹿じゃない。
半分ほど食べてから、残りをジップロックに入れてから戸棚に入れておいた。また気分が乗った時にでも食べれるように、と。
それから、着替えて身支度を整えてから。真衣は植田の駅に向かって栄まで地下鉄に乗った。
「人、多!?」
休日だから多くて当然だが、バレンタインシーズンだからかどこを行っても人、人、人。
そして、デパートに行けばさらに密集していたのだ。これでは、大方目当てのものは品切れ確実。
仕方ないので、妥協しようと沓木の彼氏がいるマカロン専門店に行こうとしたら。
途中、誰かと肩がぶつかったのだ。
「あ……すみませ」
「ごめんなさ……い?」
顔を見たら、これまたびっくり。
意中の相手である、不動がいたのだった。
思わず立ち止まってしまったが、何故か不動が動き。真衣の手首を掴んで、栄の広場の一つに連れて行かれたのだ。
「ここ……なら」
そして、走ったわけではないのに息切れてしまっている。何かしたのだろうか、と真衣は首を傾げたのだった。
「あの……?」
「あ、すみません! 俺、勝手に掴んじゃって!!」
「あ、いえ。それはいいんですけど……大丈夫、ですか?」
「え?」
「息切れて……たので」
「……特訓してたんです」
「特訓?」
「その……俺、人混みが結構苦手で。けど、克服するのに……わざと、来てたんです」
「おお! 凄いです!」
「凄い……ですか?」
「はい。私は料理が全然ダメだったんで、買いに来たりしてるから」
今度の合同飲み会で渡せたらいいな、とは思っていたが。まさか、そこまで不器用だとは思わず、失敗作だらけになった。
それはいくらなんでも言えないので、苦笑いしておくことにした。
「……買い物、ですか?」
いくらか呼吸が整ってきたところで、不動が質問してきた。
「はい。美味しいお菓子屋さんとかいっぱいあるじゃないですか? 先輩の彼氏さんがパティシエさんなんですよ。そこに行こうかな、と」
「急ぎ……ですか?」
「?? いえ。この人混みじゃ、今行っても人でいっぱいでしょうし」
「そ、その。この前のお礼になるかわからないですけど。……昼、奢ります」
「え、いいんですか?」
「も、もちろん」
まさか、人混みが苦手でもお誘いをしてもらえるとは思わず。
真衣は子供のようにはしゃぐところだった。二十三歳でも、大人は大人と言い聞かせて、真衣は首を大きく縦に振った。
「行きたいです! あ、改めて、田城真衣です!」
「ふ……不動侑です」
じゃあ、行こうか。と、二人はゆっくりと人混みの波に向かうのだった。
いや、普段が悪いのだ。怪我まではいかないが、料理に関してここまで不器用だとは思わず。
ワンルームのキッチンに山積みになってしまった、失敗作達をどうすればいいのか。やはり、同期の湖沼美兎にも協力してもらえばよかった。
けれど、彼女は今日は用事があるのでダメだった。多分だが、休み前に言ってた二年先輩の沓木桂那との用事。
何故、真衣は除け者だろうか。少し悔しいが、悔いても遅い。とりあえず片付けを頑張ってから、インスタントのコーヒーで失敗作のお菓子を片付けることにした。
「……あ。味は悪くない?」
味覚音痴ではないが、外食が多い真衣の舌でも受け付けられる味だった。
だが、これらの成功作を渡す予定だった、好きになった人。不動侑には渡せれない。
いくらポジティブ人間の真衣でも、節度くらいは弁えている。そこまで馬鹿じゃない。
半分ほど食べてから、残りをジップロックに入れてから戸棚に入れておいた。また気分が乗った時にでも食べれるように、と。
それから、着替えて身支度を整えてから。真衣は植田の駅に向かって栄まで地下鉄に乗った。
「人、多!?」
休日だから多くて当然だが、バレンタインシーズンだからかどこを行っても人、人、人。
そして、デパートに行けばさらに密集していたのだ。これでは、大方目当てのものは品切れ確実。
仕方ないので、妥協しようと沓木の彼氏がいるマカロン専門店に行こうとしたら。
途中、誰かと肩がぶつかったのだ。
「あ……すみませ」
「ごめんなさ……い?」
顔を見たら、これまたびっくり。
意中の相手である、不動がいたのだった。
思わず立ち止まってしまったが、何故か不動が動き。真衣の手首を掴んで、栄の広場の一つに連れて行かれたのだ。
「ここ……なら」
そして、走ったわけではないのに息切れてしまっている。何かしたのだろうか、と真衣は首を傾げたのだった。
「あの……?」
「あ、すみません! 俺、勝手に掴んじゃって!!」
「あ、いえ。それはいいんですけど……大丈夫、ですか?」
「え?」
「息切れて……たので」
「……特訓してたんです」
「特訓?」
「その……俺、人混みが結構苦手で。けど、克服するのに……わざと、来てたんです」
「おお! 凄いです!」
「凄い……ですか?」
「はい。私は料理が全然ダメだったんで、買いに来たりしてるから」
今度の合同飲み会で渡せたらいいな、とは思っていたが。まさか、そこまで不器用だとは思わず、失敗作だらけになった。
それはいくらなんでも言えないので、苦笑いしておくことにした。
「……買い物、ですか?」
いくらか呼吸が整ってきたところで、不動が質問してきた。
「はい。美味しいお菓子屋さんとかいっぱいあるじゃないですか? 先輩の彼氏さんがパティシエさんなんですよ。そこに行こうかな、と」
「急ぎ……ですか?」
「?? いえ。この人混みじゃ、今行っても人でいっぱいでしょうし」
「そ、その。この前のお礼になるかわからないですけど。……昼、奢ります」
「え、いいんですか?」
「も、もちろん」
まさか、人混みが苦手でもお誘いをしてもらえるとは思わず。
真衣は子供のようにはしゃぐところだった。二十三歳でも、大人は大人と言い聞かせて、真衣は首を大きく縦に振った。
「行きたいです! あ、改めて、田城真衣です!」
「ふ……不動侑です」
じゃあ、行こうか。と、二人はゆっくりと人混みの波に向かうのだった。