こんな高価な品を頂けるだなんて、とんでもない。
そう言おうと思ったら、空木の妻である美樹は少し貸して、とかんざしを手に取り。
なんと、軽くブラッシングしているだけの美兎の髪を触り。どうやら、そのかんざしをつけてくれるようだった。
「あ、あの!」
「ふふ。大丈夫よ。私と同じ顔もだけど、若い女の子こそ。特別な時に着飾るべきよ? 今はお仕事着だけど」
まあまあ、と美樹の手でかんざしをつけてもらうことになり。
出来上がると、うなじ辺りが少しすーすーしたが違和感がなかった。
「……よく、お似合いですよ。美兎さん」
調理場にいる恋人の火坑が、嬉しそうに微笑んだのだった。
「ほんと……ですか?」
「ええ。お約束していた着物デートの時にでも」
「いやねえ? 火坑ったら、そんなモダンデートの約束までしてんの?」
「真穂さんも海峰斗さんとご一緒に行かれては?」
「そうね? 挨拶回りついでにいいかも」
「真穂ちゃん……加減はしてあげてね?」
「まー、あいつなら大丈夫大丈夫」
とりあえず、かんざしをずっとつけていると首元が落ち着かないので。美樹には申し訳ないが外させてもらい、布に包んでから折れないように鞄に仕舞わせてもらった。
「ふふ。久しぶりに作ったけど、孫の孫くらいの子にも似合って良かったわ」
「え、美樹……さんが作ったんですか!?」
「ええ。空木様に梅と枝だけは調達していただいて。あとは全部私ね? 空木様とご一緒になる前はこれでもかんざし職人だったのよ」
「す、すごい……です」
「今の技術も面白いから取り入れたの。梅の花はレジンに閉じ込めたのよ」
「へー?」
だから、生花のように見えたのか。ますます凄いと思わざるを得ない。
着物を着る機会がちゃんとあるので、その時に出来る様に練習しようと心に決めた。
「さ。せっかくの宴です。今宵は私の支払いなので遠慮しないでください」
と、空木が言うので。美兎はすかさず火坑に両手を差し出した。
「では、せめて。心の欠片だけでも!」
「ふふ。空木さん、どうされますか?」
「そうですね? 美樹も久しく心の欠片を口にしていないので。……お願いしてもいいですか?」
「任せてください!」
さて、今日は何が出るか。
ぽんぽんと火坑が美兎の手のひらを軽く叩けば、出てきたのは大き過ぎる骨付きの鳥もも肉だった。
しかも、『達』がするくらいの量。
びっくりしたので、慌てて落としかけたのだった。
「これは凄い! おそらく、空木さんが開花させ。さらに滝夜叉姫さんからも呪いをかけられたために。霊力と妖気が高まったからでしょう」
「あと、真穂の加護も強めたし」
「ですね? これだけ立派な骨つき肉。フライドチキンもいいですが、時短で煮付けにしましょうか?」
「煮付け、ですか?」
フライドチキンもきっと美味しいのに、空木夫妻に合わせてかそれともすっごく美味しいのか。
とりあえず、待っている間にスッポンスープかと思いきや。余分にカットした肉と皮で即席塩味の焼き鳥をこさえてくれたのだった。
「あら、嬉しい」
「タレも良いですが、皮もいいですからね? 大将、その煮付けは少しお時間をかけていただいてもよろしいですか?」
「はい?……ああ。演奏なさいますか?」
「ええ。少々」
なので、クリスマス以来の琵琶演奏会が開かれたのだった。
そう言おうと思ったら、空木の妻である美樹は少し貸して、とかんざしを手に取り。
なんと、軽くブラッシングしているだけの美兎の髪を触り。どうやら、そのかんざしをつけてくれるようだった。
「あ、あの!」
「ふふ。大丈夫よ。私と同じ顔もだけど、若い女の子こそ。特別な時に着飾るべきよ? 今はお仕事着だけど」
まあまあ、と美樹の手でかんざしをつけてもらうことになり。
出来上がると、うなじ辺りが少しすーすーしたが違和感がなかった。
「……よく、お似合いですよ。美兎さん」
調理場にいる恋人の火坑が、嬉しそうに微笑んだのだった。
「ほんと……ですか?」
「ええ。お約束していた着物デートの時にでも」
「いやねえ? 火坑ったら、そんなモダンデートの約束までしてんの?」
「真穂さんも海峰斗さんとご一緒に行かれては?」
「そうね? 挨拶回りついでにいいかも」
「真穂ちゃん……加減はしてあげてね?」
「まー、あいつなら大丈夫大丈夫」
とりあえず、かんざしをずっとつけていると首元が落ち着かないので。美樹には申し訳ないが外させてもらい、布に包んでから折れないように鞄に仕舞わせてもらった。
「ふふ。久しぶりに作ったけど、孫の孫くらいの子にも似合って良かったわ」
「え、美樹……さんが作ったんですか!?」
「ええ。空木様に梅と枝だけは調達していただいて。あとは全部私ね? 空木様とご一緒になる前はこれでもかんざし職人だったのよ」
「す、すごい……です」
「今の技術も面白いから取り入れたの。梅の花はレジンに閉じ込めたのよ」
「へー?」
だから、生花のように見えたのか。ますます凄いと思わざるを得ない。
着物を着る機会がちゃんとあるので、その時に出来る様に練習しようと心に決めた。
「さ。せっかくの宴です。今宵は私の支払いなので遠慮しないでください」
と、空木が言うので。美兎はすかさず火坑に両手を差し出した。
「では、せめて。心の欠片だけでも!」
「ふふ。空木さん、どうされますか?」
「そうですね? 美樹も久しく心の欠片を口にしていないので。……お願いしてもいいですか?」
「任せてください!」
さて、今日は何が出るか。
ぽんぽんと火坑が美兎の手のひらを軽く叩けば、出てきたのは大き過ぎる骨付きの鳥もも肉だった。
しかも、『達』がするくらいの量。
びっくりしたので、慌てて落としかけたのだった。
「これは凄い! おそらく、空木さんが開花させ。さらに滝夜叉姫さんからも呪いをかけられたために。霊力と妖気が高まったからでしょう」
「あと、真穂の加護も強めたし」
「ですね? これだけ立派な骨つき肉。フライドチキンもいいですが、時短で煮付けにしましょうか?」
「煮付け、ですか?」
フライドチキンもきっと美味しいのに、空木夫妻に合わせてかそれともすっごく美味しいのか。
とりあえず、待っている間にスッポンスープかと思いきや。余分にカットした肉と皮で即席塩味の焼き鳥をこさえてくれたのだった。
「あら、嬉しい」
「タレも良いですが、皮もいいですからね? 大将、その煮付けは少しお時間をかけていただいてもよろしいですか?」
「はい?……ああ。演奏なさいますか?」
「ええ。少々」
なので、クリスマス以来の琵琶演奏会が開かれたのだった。