火坑のコートとマフラーを預かって、とりあえず美兎の自室に掛けてきて、廊下で待っていた香取響也と両親が待つ居間に向かう。
さすがに家の中なので手は繋がなかったのでそのまま行くと。
居間のソファで、片側を占領していた父親の姿は。何故か、敵を待ち構えているような雰囲気でいた。
その様子は、たしかに兄が言っていたように。火坑をまだ信じていない感じだ。訂正しようと、火坑を座らせる前に、美兎は父親の前に立った。
「お父さん、なんでそんな怖い顔でいるの!? せっかく響也さんが来てくれたのに!!」
「……そうは言うが、美兎」
「あの人と響也さんを比べないで!? 全然違う人だし、一緒にもしないで!!」
「み、美兎さん?」
「……美兎。そんなにも、その人が好きか?」
「うん。あの人との傷だなんてもう関係ないわ。響也さんだから好きなの!!」
「……そうか」
すると、父親はソファから立ち上がって、火坑の方に向かって腰を折ったのだ。
「?」
「不躾な態度をとって申し訳ない。だが、あなたのことは娘から聞いた情報と写真程度だったから。あなた自身を……少し疑っていた。だが、娘がこれほどまで私に意見をしてきたのは、就職関連以来だったから……納得しました」
「えっと……湖沼さん。頭を上げてください! 僕はそんな大した人間ではないですし」
「はは。そう遠慮がちに言われれば。ますます疑っていたのを恥ずかしく思うよ」
と、反省しつつも照れ臭そうに笑った父親の顔はいつもままだった。
母もキッチンからそのやりとりを聞いていたからか、疑わずに手製のほうじ茶を持ってきたのだ。
「香取さん、いらっしゃい。美兎の写真で見たよりもいい男じゃない? お父さんは心配し過ぎ」
「……そう言う母さんだって。美兎が話題を持ってきた時は疑ってたじゃないか?」
「まあね? けど。わざわざ手料理を持って来てくれたのよ? 出来る人じゃない」
「まあ、そうだが」
「あ、こちらの荷物ですが」
火坑が居間の真ん中に置いた時に、部屋に何か取りに行ってた兄が戻って来た。
「お! 香取さんの手料理?」
「普段は小料理屋を営んでいますが。せっかくのお呼ばれなので、色々作ってみました」
そして、風呂敷包みから出てきた重箱は。テレビとかで見たような、綺麗な漆塗りの。一番上の蓋を開ければ、出て来たのはサーモンピンクが美しい鮭の押し寿司だった。
「うっわ!? すっげ!!」
「蓋には保冷剤まで。……こんな綺麗な押し寿司。会社の会食でも滅多に出ないぞ?」
「あら〜? お寿司取らないで正解ねー? わざわざありがとうございます、香取さん」
「すっごいです!」
「ふふ。表面は鱒寿司と似ていますが。内側には僕手製のいくらの塩麹漬けが隠れているんです」
「手製!?」
「おお!!?」
「お父さん達いくら大好きだものね?」
「はい。美兎さんから伺ったもので、入れてみたんです」
LIMEでやりとりしてた時に聞かれたことを取り入れてくれるとは、さすがは火坑だ。
他の箱には、猪肉の角煮だったり。豆鯵の南蛮漬けだったり、野菜は普通のお浸しかと思えば、と。
食べる前から湖沼家一同を喜ばせてくれたのだった。
「あらあらあら。お母さん、負けちゃいそう。美兎? あなたも自炊とかちゃんとしてるの?」
「……一応」
「ふふ。週に二日くらいは、僕の店に来てくださいますしね?」
「まあ。これだけ美味しそうなお料理に夢中になるのもわかるわ。さ、お酒も今日は解禁!」
「ひゃっほぅ!」
「香取さん……いや、響也君。飲もう!」
「是非」
と言うわけで、半分は火坑の料理に魅了されたことで受け入れてもらえたのだが。
昼に宴を開いたのに夜まで続き。終いには、本来人間ではない火坑が男性二名を酔いつぶしてしまったので。
火坑は介抱。美兎と母親で片付けをすることになったのだ。
さすがに家の中なので手は繋がなかったのでそのまま行くと。
居間のソファで、片側を占領していた父親の姿は。何故か、敵を待ち構えているような雰囲気でいた。
その様子は、たしかに兄が言っていたように。火坑をまだ信じていない感じだ。訂正しようと、火坑を座らせる前に、美兎は父親の前に立った。
「お父さん、なんでそんな怖い顔でいるの!? せっかく響也さんが来てくれたのに!!」
「……そうは言うが、美兎」
「あの人と響也さんを比べないで!? 全然違う人だし、一緒にもしないで!!」
「み、美兎さん?」
「……美兎。そんなにも、その人が好きか?」
「うん。あの人との傷だなんてもう関係ないわ。響也さんだから好きなの!!」
「……そうか」
すると、父親はソファから立ち上がって、火坑の方に向かって腰を折ったのだ。
「?」
「不躾な態度をとって申し訳ない。だが、あなたのことは娘から聞いた情報と写真程度だったから。あなた自身を……少し疑っていた。だが、娘がこれほどまで私に意見をしてきたのは、就職関連以来だったから……納得しました」
「えっと……湖沼さん。頭を上げてください! 僕はそんな大した人間ではないですし」
「はは。そう遠慮がちに言われれば。ますます疑っていたのを恥ずかしく思うよ」
と、反省しつつも照れ臭そうに笑った父親の顔はいつもままだった。
母もキッチンからそのやりとりを聞いていたからか、疑わずに手製のほうじ茶を持ってきたのだ。
「香取さん、いらっしゃい。美兎の写真で見たよりもいい男じゃない? お父さんは心配し過ぎ」
「……そう言う母さんだって。美兎が話題を持ってきた時は疑ってたじゃないか?」
「まあね? けど。わざわざ手料理を持って来てくれたのよ? 出来る人じゃない」
「まあ、そうだが」
「あ、こちらの荷物ですが」
火坑が居間の真ん中に置いた時に、部屋に何か取りに行ってた兄が戻って来た。
「お! 香取さんの手料理?」
「普段は小料理屋を営んでいますが。せっかくのお呼ばれなので、色々作ってみました」
そして、風呂敷包みから出てきた重箱は。テレビとかで見たような、綺麗な漆塗りの。一番上の蓋を開ければ、出て来たのはサーモンピンクが美しい鮭の押し寿司だった。
「うっわ!? すっげ!!」
「蓋には保冷剤まで。……こんな綺麗な押し寿司。会社の会食でも滅多に出ないぞ?」
「あら〜? お寿司取らないで正解ねー? わざわざありがとうございます、香取さん」
「すっごいです!」
「ふふ。表面は鱒寿司と似ていますが。内側には僕手製のいくらの塩麹漬けが隠れているんです」
「手製!?」
「おお!!?」
「お父さん達いくら大好きだものね?」
「はい。美兎さんから伺ったもので、入れてみたんです」
LIMEでやりとりしてた時に聞かれたことを取り入れてくれるとは、さすがは火坑だ。
他の箱には、猪肉の角煮だったり。豆鯵の南蛮漬けだったり、野菜は普通のお浸しかと思えば、と。
食べる前から湖沼家一同を喜ばせてくれたのだった。
「あらあらあら。お母さん、負けちゃいそう。美兎? あなたも自炊とかちゃんとしてるの?」
「……一応」
「ふふ。週に二日くらいは、僕の店に来てくださいますしね?」
「まあ。これだけ美味しそうなお料理に夢中になるのもわかるわ。さ、お酒も今日は解禁!」
「ひゃっほぅ!」
「香取さん……いや、響也君。飲もう!」
「是非」
と言うわけで、半分は火坑の料理に魅了されたことで受け入れてもらえたのだが。
昼に宴を開いたのに夜まで続き。終いには、本来人間ではない火坑が男性二名を酔いつぶしてしまったので。
火坑は介抱。美兎と母親で片付けをすることになったのだ。