人や物、なににおいてもその大切さは失ってから気付く。
 そして皆、大切にできなかったことを後悔する。

 よくそんなことを聞く。
 正直、聞き飽きたくらいだ。

 そうやって、ちゃんとわかっていたから。
 これでもかというほど、大切にしていた。周りからやりすぎだと言われることもあったが、まだまだ大切にしたい気持ちが強かった。

 失いたくなかった。
 ただそれだけだった。

 しかし、知らぬ間に最期は近付いていた。

 手で包み込むように大切にしていても、水をすくっているようで、少しずつ、少しずつこぼれ落ちていた。

 愚かな自分は、大切なものが消えていくその感覚に、少しも違和感を抱かなかった。

 大切にしていたつもりだったのだとわかるのは、やはり取り返しのつかない状態になってからだった。

 神様とやらは愚かな私を嘲笑うかのように、一番大切なものを簡単に奪い去っていった。

 その瞬間から、輝いていた世界は闇に染まった。
 なにを見ても、なにをしても、なにも感じない。すべてがどうでもよくなってしまっていた。

 光を失った世界は、死ぬほどつまらない。

 生きる意味がなくなった、色のない世界に興味なんてない。
 そう思っても、生きることをやめられなかった。やめようとしても、その勇気がなかった。

 しかし君を失ってからというもの、どう生きていけばいいのか、まったくわからない。

 君がいない世界で生きていくためには、私はどうすればいいのだろう──