大学という場所は不思議なもので、学内のいたるところに張り紙がある。
それはついさっき学務の事務員が張った休校のお知らせの茶色っぽいわら半紙だったり、何年も前のカラー印刷されたサークル活動勧誘のビラが貼りっぱなしになってあいるものだったりと色んな情報がごちゃまぜになっている。
どれもさほど重要なことが書かれていることは少ない。情報を発信する側の都合で張り出される紙たちは、あっという間に日差しと雨風で風化し壁の一部に、学校の一部へと埋まっていく。
バイトもサークルもない俺は暇を持て余してそれらの地層をじっくり観察するのが日課となっていた。
図書館に張り出されている、図書の返却が遅れている学生の学籍番号は僕の一個前の女の子のモノだった。
社会保障法の教授の授業はちょうど一年前も休校だった。
そして、工学部の学生が過去に一人行方不明になっていることから、できるだけ一人で行動しないようにという呼びかけのお知らせが、理学部のキャンパスの壁に貼ってあった。
おかしい。
人が一人行方不明になっているというのに、僕は最近そのニュースを見た覚えがなかった。また、入学式のあとに行われた新入生のためのガイダンスでもそんな話は一言も出てこなかった。
学校側が事件を隠蔽したくて、ガイダンスで話さなかったというのは分かる。しかし、いくら大学と言えども外部の報道までも隠すことはできないはずだ。
ぼんやりそんなことを考えながらその注意喚起のお知らせを眺める。
この学生には友達がいたのだろうか。
サークルにはいっていたのだろうか?
アルバイトはしていたのだろうか?
お昼休みは誰かと食事をしていたのだろうか?
恋人はいたのだろうか?
この学生の不在を誰が最初に気づいたのだろうか?
僕がいなくなったとき、誰かが気づいてくれるだろうか?
僕がいなくなったら、僕もこんな風に張り紙になるのだろうか?
学校の張り紙たちは一瞬で色褪せ、風化していく。
人が一人いなくなってもそのお知らせはあっという間に壁の中に埋まっていくのだ。
いなくなった学生の友人たちでさえ、その張り紙をみて思い出すことなく、意識の外に消えていく。
僕はそう考えると自分自身が今この瞬間、本当に大学という空間に存在しているのかどうか分からなくなって恐ろしくなる。
ましてや、サークルもバイトもない僕のことだ。
僕の存在が消えたとしても僕の情報で張り紙になるのは僕自身ではなく図書館で延滞している本のリストくらいかもしれない。
誰も僕がいなくなったって気づかない。
それはついさっき学務の事務員が張った休校のお知らせの茶色っぽいわら半紙だったり、何年も前のカラー印刷されたサークル活動勧誘のビラが貼りっぱなしになってあいるものだったりと色んな情報がごちゃまぜになっている。
どれもさほど重要なことが書かれていることは少ない。情報を発信する側の都合で張り出される紙たちは、あっという間に日差しと雨風で風化し壁の一部に、学校の一部へと埋まっていく。
バイトもサークルもない俺は暇を持て余してそれらの地層をじっくり観察するのが日課となっていた。
図書館に張り出されている、図書の返却が遅れている学生の学籍番号は僕の一個前の女の子のモノだった。
社会保障法の教授の授業はちょうど一年前も休校だった。
そして、工学部の学生が過去に一人行方不明になっていることから、できるだけ一人で行動しないようにという呼びかけのお知らせが、理学部のキャンパスの壁に貼ってあった。
おかしい。
人が一人行方不明になっているというのに、僕は最近そのニュースを見た覚えがなかった。また、入学式のあとに行われた新入生のためのガイダンスでもそんな話は一言も出てこなかった。
学校側が事件を隠蔽したくて、ガイダンスで話さなかったというのは分かる。しかし、いくら大学と言えども外部の報道までも隠すことはできないはずだ。
ぼんやりそんなことを考えながらその注意喚起のお知らせを眺める。
この学生には友達がいたのだろうか。
サークルにはいっていたのだろうか?
アルバイトはしていたのだろうか?
お昼休みは誰かと食事をしていたのだろうか?
恋人はいたのだろうか?
この学生の不在を誰が最初に気づいたのだろうか?
僕がいなくなったとき、誰かが気づいてくれるだろうか?
僕がいなくなったら、僕もこんな風に張り紙になるのだろうか?
学校の張り紙たちは一瞬で色褪せ、風化していく。
人が一人いなくなってもそのお知らせはあっという間に壁の中に埋まっていくのだ。
いなくなった学生の友人たちでさえ、その張り紙をみて思い出すことなく、意識の外に消えていく。
僕はそう考えると自分自身が今この瞬間、本当に大学という空間に存在しているのかどうか分からなくなって恐ろしくなる。
ましてや、サークルもバイトもない僕のことだ。
僕の存在が消えたとしても僕の情報で張り紙になるのは僕自身ではなく図書館で延滞している本のリストくらいかもしれない。
誰も僕がいなくなったって気づかない。
