僕の大学生活というのは非常に普通である。できる限り普通に、目立たず、周りと同じように大学生としてのイベントささやかに味わいたい。
 僕はそんな気持ちで大学に入学した。
 ひっそりと目立たないように学校に行き、授業を受ける。図書館で本を読み、レポートや英語のイーラーニングの為にパソコン室にいりびたった。
 そんな普通の大学生活を俺は必死に楽しんでいた。
 最初は物珍しさで、頭がパンクしそうだった。
 大学っていう場所は沢山の色と音に溢れている。
 真っ白な部屋で音楽を大音量で聞きながら、絵の具を壁にぶちまけたみたいな感じがした。大きな音や初めて見る色に驚きの連続だった。
 僕自身が巨大な万華鏡の中に閉じ込められているみたいに、色や音がどんどん形を変えて僕の周りでいろんな形になって回転していった。
 ぐるぐると色と音が混ざったっと思ったら、離れて全く違う形に変わる。
 僕の最初の数か月はそんな万華鏡のような迷路のなかでアパートと大学の往復で過ぎていった。
 その間に多くの新入生はアルバイトだのサークル活動だのに勤しみ、薔薇色のキャンパスライフやら桃色のキャンパスライフを手に入れていた。
 そう、僕は出遅れたのだ。
 環境の変化についていくのが精いっぱいで何も始めることができなかった。
 気が付くと周りは、大学のほかに自分の所属する団体というものができていて、一本の軸がすうっと通っているみたいで生き生きとしていて、入学したころに比べて大人びた表情をしていた。
 その成長がとっても眩しくてうらやましかった。
 だけれど、大学に入るとき僕は学生なのだからアルバイトは極力しないと決めていた。よく、アルバイトにかまけて単位を落とす学生がいるときいていたからだ。僕は一度、熱を上げるとそればっかりになってしまう極端なところがある。
 せっかく大学に入ったのにそれでは本末転倒である。
 でも、サークルくらいは行っておけばよかったとちょっと後悔した。
 この後悔はついこの前アニメで見た四畳半神話大系の影響かもしれない。
 僕も時間を巻き戻して、あんなふうに何度も大学生活を思うようになるまで繰り返したい。サークルに入ったり正体不明な先輩に弟子入りしたり、黒髪の乙女に恋をして、四畳半の部屋でCUBEをしてみたいと思った。
 もし、時間を巻き戻せるなら、そう思ったことはないだろうか。
 僕は何度もそう思っている。
 時間を巻き戻してどこにいこう?
 大学入学当初か?それとも……サクラと出会ったあの日だろうか?