ふわふわとしたホイップクリームみたいなきめの泡で体をなでられるとくすぐったくて仕方がない。
くすぐったくて身をよじると、マチコに「こらっ」と怒られる。
マチコはネコ足のバスタブに私の大好きなミルク色のお湯を張る。
お菓子に使われる食欲に訴えかける人工的なわざとらしい香りよりもずっと優しくてほっとする。
今日はなんとそこに、紅いなにかが浮いていた。血?
一瞬目を疑う。
違った。そこには、薔薇の花びらが浮かべられていた。
マチコは腰に手をあてて自慢げに、それが薔薇園から直送してもらった本物の薔薇であることを教えてくれた。しかもてまがかかっていて、普通の飾る用のものと違いお風呂に入れるために香りのよいものを丁寧に育てているらしい。
そういえば、造花の薔薇の花は嫌というほどみているけど、本物の薔薇の花なんてあまりみたことがなかった。
私は、ミルク色のお湯に浮かんだ薔薇をなんとなく手にとって見つめた。薔薇の花びらはハート形をしていて可愛らしかった。こうやってみると薔薇の花束をもらうってすごいことだ。だって、こんなにたくさんのハートを差し出されているということなんだから。
私はなんとなく、指先でつまんだ薔薇を口に入れてみたくなる。
薔薇のジャムとかあるくらいだし、お風呂にいれてもいいくらいなんだから人体にそんな悪影響があるはずない。
唇にやわらかいその花びらが触れた瞬間、あっとマチコが気づいて止めてくれた。まあ、ちょっぴり齧っちゃったんだけれど、やわらかい花びらが舌と唇に触れて、歯をたてた部分はサクッと抵抗なく繊維をつぶさせてくれた。なんだか、野菜みたいな歯ざわりでちょっとだけ嬉しくなる。香りはとってもみずみずしくて、飲み込んでみたかったがマチコが許さなかった。
お風呂から上がると、マチコが髪をドライヤーで乾かしてくれる。マチコの部屋を借りた場合いつものことだけれど、私はなんだか自分がお風呂に入れられた犬にでもなったような気分になる。
髪が十分に乾いたら、椿油をしみこませた木の櫛で丁寧に私の髪を梳かしてくれる。椿油を吸って飴色に輝く櫛はそれ一つでものすごく素敵な小道具だった。
なんだかんだ言って、マチコは育ちがいいんだ。
わざと擦れたみたいな服装やメイクをしても、マチコはすごく繊細だ。
いつもさみしそうな眼をしている。
それに、とても渇いている。
だから、私はマチコの渇きが少しでもいえるようにできるだけお茶をいれることにしている。もちろん、マチコの分はマチコの大好きな氷で満たされたグラスを使う。
「ありがとう」マチコにそう言われた瞬間、私は思わず秘密を告白したくなる。
だけど、私はマチコに嘘をつきたくなかった。秘密を告白してしまったらうそをつき続けなければならない。
私が人を殺したことがあるというのも嘘になるように。
マチコにはできるだけ、そんなくだらない嘘をつきたくなかった。
水色のタイルの上に淡い色の髪がはらはらと落ちていく。
丁寧に櫛でとかしてもらっていて、引っかかることはほとんどないけれど、どうしても何本か髪の毛が抜け落ちてしまう。淡い水色のタイルの上に落ちた薄茶色の髪の毛はなんだか、気持ちが悪かった。
髪をとかし終わると、マチコは髪の毛を拾い集めて和紙で丁寧に包む。ほらね、やっぱりマチコはちゃんとした家のコだ。
私は嘘をつきたくて仕方ない。
胸の中に鉛がどんどんたまっていく、固く冷たいそれは私の呼吸を難しくしていった。
くすぐったくて身をよじると、マチコに「こらっ」と怒られる。
マチコはネコ足のバスタブに私の大好きなミルク色のお湯を張る。
お菓子に使われる食欲に訴えかける人工的なわざとらしい香りよりもずっと優しくてほっとする。
今日はなんとそこに、紅いなにかが浮いていた。血?
一瞬目を疑う。
違った。そこには、薔薇の花びらが浮かべられていた。
マチコは腰に手をあてて自慢げに、それが薔薇園から直送してもらった本物の薔薇であることを教えてくれた。しかもてまがかかっていて、普通の飾る用のものと違いお風呂に入れるために香りのよいものを丁寧に育てているらしい。
そういえば、造花の薔薇の花は嫌というほどみているけど、本物の薔薇の花なんてあまりみたことがなかった。
私は、ミルク色のお湯に浮かんだ薔薇をなんとなく手にとって見つめた。薔薇の花びらはハート形をしていて可愛らしかった。こうやってみると薔薇の花束をもらうってすごいことだ。だって、こんなにたくさんのハートを差し出されているということなんだから。
私はなんとなく、指先でつまんだ薔薇を口に入れてみたくなる。
薔薇のジャムとかあるくらいだし、お風呂にいれてもいいくらいなんだから人体にそんな悪影響があるはずない。
唇にやわらかいその花びらが触れた瞬間、あっとマチコが気づいて止めてくれた。まあ、ちょっぴり齧っちゃったんだけれど、やわらかい花びらが舌と唇に触れて、歯をたてた部分はサクッと抵抗なく繊維をつぶさせてくれた。なんだか、野菜みたいな歯ざわりでちょっとだけ嬉しくなる。香りはとってもみずみずしくて、飲み込んでみたかったがマチコが許さなかった。
お風呂から上がると、マチコが髪をドライヤーで乾かしてくれる。マチコの部屋を借りた場合いつものことだけれど、私はなんだか自分がお風呂に入れられた犬にでもなったような気分になる。
髪が十分に乾いたら、椿油をしみこませた木の櫛で丁寧に私の髪を梳かしてくれる。椿油を吸って飴色に輝く櫛はそれ一つでものすごく素敵な小道具だった。
なんだかんだ言って、マチコは育ちがいいんだ。
わざと擦れたみたいな服装やメイクをしても、マチコはすごく繊細だ。
いつもさみしそうな眼をしている。
それに、とても渇いている。
だから、私はマチコの渇きが少しでもいえるようにできるだけお茶をいれることにしている。もちろん、マチコの分はマチコの大好きな氷で満たされたグラスを使う。
「ありがとう」マチコにそう言われた瞬間、私は思わず秘密を告白したくなる。
だけど、私はマチコに嘘をつきたくなかった。秘密を告白してしまったらうそをつき続けなければならない。
私が人を殺したことがあるというのも嘘になるように。
マチコにはできるだけ、そんなくだらない嘘をつきたくなかった。
水色のタイルの上に淡い色の髪がはらはらと落ちていく。
丁寧に櫛でとかしてもらっていて、引っかかることはほとんどないけれど、どうしても何本か髪の毛が抜け落ちてしまう。淡い水色のタイルの上に落ちた薄茶色の髪の毛はなんだか、気持ちが悪かった。
髪をとかし終わると、マチコは髪の毛を拾い集めて和紙で丁寧に包む。ほらね、やっぱりマチコはちゃんとした家のコだ。
私は嘘をつきたくて仕方ない。
胸の中に鉛がどんどんたまっていく、固く冷たいそれは私の呼吸を難しくしていった。
