シェアハウスの君と

 家に帰ると、マチコはすっかり良くなっていた。単なる貧血らしい。そういえば前にテレビの健康番組で貧血の人は氷を食べたがるとかやっていたなと思い出して妙に納得する。そういえば、この家の住人は結構健康番組とかが好きである。
 特にマチコは美肌食材とかそんな感じの特集が大好きでかじりつくように見ている。
 一生懸命メモをとっている姿がけなげでなんとも可愛らしい。
 確かにマチコの肌はネコみたいなアイラインが引かれていないすっぴんでもきれいだった。

 まあ、みんな心配しているから今日はこのままカナエさんの部屋で休むことになったが。
 夕飯はなんとなく、みんなでマチコにあわせて卵のおじやを食べる。
 白くて柔らかい米の甘味のなかに黄色い卵がひらひらと散りばめられている。
 温かいそれはおなかのなかにするすると入っていき、みぞおちのあたりが晴れた日のお布団みたいにほかほかで気持ちよくなった。
 もちろん、それだけじゃ終わらないのが我が家の夕食で、何か肉のそぼろのようなものが出てきて、それとネギやら梅干しがならべられ、個人の好みに合わせて味の調整ができた。なんというか、家なのに芸が細かい。

 温かい食卓がすごく幸せだ。

 こんな幸せなことがあっていいのだろうか。

 皆が笑顔で、あたたかくて、ちょっとだけくすぐったい。

 彼女たちは僕と家族で、お互いを認め合って、お互いを心配して、みんなをたいせつに思って生きている。

 僕はずっとこんな家族を求めていたのかもしれない。

 大学でボッチなのは、周りのせいじゃなかった。
 僕は拒絶していたんだ。大学には勉強するために行っているからって、僕は友達をつくって遊んでいる周りを馬鹿にしていた。
 一言話しかければいいのに、下を向きつづけていたのは僕だ。
 下を向きつづけて、周りを馬鹿にしていたんだ。ガキみたいだなんて思いながら、うらやましくて仕方がなかった。
 ちゃんと誰かを思いやればよかったのだ。
 こんな風に考えられるようになったのも、目の前のあたたかさも、すべてサクラのおかげだ。

 サクラにお礼がしたい。

 そして、彼女に謝らなければならないことがある。