「こんなにたくさんの氷一体何に使うの?」
僕はなんてことをない顔をしてマチコに聞く。
その一瞬マチコの目はいつもよりちょっとだけ大きくなった。
「もちろん、飲み物にいれるの」
マチコは涼しい顔をして答える。ちょっとだけ早口で目をそらすのが、いつも堂々としているマチコにしては珍しいというか何か変だ。
いつも人のことをじいっと見つめすぎるくらいなのに、今日はなぜか僕から目をそらす。
何かがおかしい。
そんな僕の様子に気づいたのか彼女はグラスにたっぷりと氷をいれる。家の冷蔵庫で作った氷と違い、透明で硬い。本物の水の結晶だった。ガラスにぶつかったときの音キィンと高く美しい。
そういえば、水にきれいな言葉をかけるとその言葉に反応して結晶になったときも、きれいな形になるって読んだことがあった。なんとも、なんとも苦笑いしたくなるが、女性だったらそういうことも好ましく想うのかもしれない。クラシック音楽を聞かせながらできた氷とか紅茶のなかに浮かんでいたら、うん、確かに優雅で贅沢だ。
部屋の中でもクラシックをかけながら、その氷を溶かせば、部屋と氷の中の音楽が混ざり合うのだ。女性ってそういうロマンチックなことが好きみたいだ。真っ白なレースのテーブルクロスや、一輪の薔薇、一冊の詩集にレース編み。
この家に住むようになってから、知った。女性ってなんか素敵だ。ずっと、無駄だと思っていたもの意味のないと思っていたもの、馬鹿にしていたものたちがどれも意味があって、人を癒している。僕が知らない世界を彼女たちはしっているのだ。僕が見えているのとは異なる世界に彼女たちは生きているのかもしれない。
僕の世界では壊れたラジオでも、女性の世界ではダイヤモンドが輝く王冠で、僕と彼女たちはちょっとだけ世界が交わる場所で偶然すれ違い続けている。
それって、奇跡みたいなことなんだ。
この偶然がずっと連続していく奇跡がずっと続けばいいのに。
もちろん、ずっと続かないことを僕はしっている。人はいつか死ぬし、僕だって大学を卒業する。
だからこそ、僕は正直に生きたい。
マチコは何かを隠している。しかも、とても大切なことを。
そりゃあ、人だから秘密の一つや二つあるのは普通だろう。
だけど、なんかいやな予感がするのだ。
一人で抱えちゃいけないことを一人で抱え込んでいるみたいな。
僕は残りの氷を冷凍庫にしまい、何にも気にしていない風に、あえてマチコを見ないで彼女に問う。
「ねえ、マチコ。マチコは何でさ……え?」
後ろを見るとマチコが倒れていた。
テーブルの上のグラスの氷はそんなときでもキラキラと大切な時間を閉じ込めた結晶のように輝いていた。
僕はなんてことをない顔をしてマチコに聞く。
その一瞬マチコの目はいつもよりちょっとだけ大きくなった。
「もちろん、飲み物にいれるの」
マチコは涼しい顔をして答える。ちょっとだけ早口で目をそらすのが、いつも堂々としているマチコにしては珍しいというか何か変だ。
いつも人のことをじいっと見つめすぎるくらいなのに、今日はなぜか僕から目をそらす。
何かがおかしい。
そんな僕の様子に気づいたのか彼女はグラスにたっぷりと氷をいれる。家の冷蔵庫で作った氷と違い、透明で硬い。本物の水の結晶だった。ガラスにぶつかったときの音キィンと高く美しい。
そういえば、水にきれいな言葉をかけるとその言葉に反応して結晶になったときも、きれいな形になるって読んだことがあった。なんとも、なんとも苦笑いしたくなるが、女性だったらそういうことも好ましく想うのかもしれない。クラシック音楽を聞かせながらできた氷とか紅茶のなかに浮かんでいたら、うん、確かに優雅で贅沢だ。
部屋の中でもクラシックをかけながら、その氷を溶かせば、部屋と氷の中の音楽が混ざり合うのだ。女性ってそういうロマンチックなことが好きみたいだ。真っ白なレースのテーブルクロスや、一輪の薔薇、一冊の詩集にレース編み。
この家に住むようになってから、知った。女性ってなんか素敵だ。ずっと、無駄だと思っていたもの意味のないと思っていたもの、馬鹿にしていたものたちがどれも意味があって、人を癒している。僕が知らない世界を彼女たちはしっているのだ。僕が見えているのとは異なる世界に彼女たちは生きているのかもしれない。
僕の世界では壊れたラジオでも、女性の世界ではダイヤモンドが輝く王冠で、僕と彼女たちはちょっとだけ世界が交わる場所で偶然すれ違い続けている。
それって、奇跡みたいなことなんだ。
この偶然がずっと連続していく奇跡がずっと続けばいいのに。
もちろん、ずっと続かないことを僕はしっている。人はいつか死ぬし、僕だって大学を卒業する。
だからこそ、僕は正直に生きたい。
マチコは何かを隠している。しかも、とても大切なことを。
そりゃあ、人だから秘密の一つや二つあるのは普通だろう。
だけど、なんかいやな予感がするのだ。
一人で抱えちゃいけないことを一人で抱え込んでいるみたいな。
僕は残りの氷を冷凍庫にしまい、何にも気にしていない風に、あえてマチコを見ないで彼女に問う。
「ねえ、マチコ。マチコは何でさ……え?」
後ろを見るとマチコが倒れていた。
テーブルの上のグラスの氷はそんなときでもキラキラと大切な時間を閉じ込めた結晶のように輝いていた。
