シェアハウスの君と

 肉は香辛料が強くてちょっと不思議な味がした。
 ピリッとからいようなあまいような。よくわからないけれど、きっと女性はこういう味が好きなのだろう。
 ツブツブとした赤い木の実みたいなものがはいっていた。なんだこれとぎょっとしながら、「これは何?」とサクラに聞くとピンクペッパーというものだった。赤いのにピンクでコショウとは意味が分からない。
 だけど、女性が好きなものというのは謎だ。
 奇妙な緑色のねっとりしたソースやなにか小さな小動物のように葉っぱや果物ばかり食べたがる。
 僕から見たら、正直彼女たちが食べたがる食べ物は異世界の食べ物だ。
 だから、きっと今夜の料理は僕にとっては不思議な味でも彼女たちにとってはお洒落で美味しい味なのだろう。きっと、パクチーみたいなものなのだろう。
 だけど、だけれど、「美味しい?」サクラがそういって小首をかしげると僕はうなずくことしかできない。
 華奢な鎖骨にさらさらとした髪がかぶさりサクラがより小動物に近づく。
 正直に言おう。
 めちゃくちゃかわいい!!
 僕はそんな彼女の姿にどきどきしながら、ひたすら頷く。
 どちらにしても僕にはそんな料理の味は分からなかっただろう。
 どの料理も彩りがよくて美しかった。
 温かくあるべきものは温かく、冷たいものはきちんと冷たかった。
 自分で作ったり、学食で食べたりしているなかで気づいたんだけど、これって結構すごいことだ。
 料理を作ってくれた人が食べる人のことを考えている証拠だ。
 ちゃんと歓迎されている。
 そう思うと、ほっとしたと同時にとてもうれしかった。
 女性向けのちょっと変わった料理でも構わない。
 僕はこれからも感謝して食事をしよう。
「ようこそ」
 サクラの甘い声が僕の耳の中でなんどもリフレインする。
 その言葉は僕の頭の中をゆっくりとかき混ぜる。ゆっくり、ゆっくりと僕の頭の中はなめらかであまいサクラの声でいっぱいに満たされていった。