「おはよう。夕食の時間だよ」
サクラは僕が起きたのを確認すると、静かに部屋をでていった。
僕は、慌てて髪を手で軽くなでつけて深いグリーンのカーディガンを羽織った。新品のそれはとても温かく、羽のように軽かった。人生で初めてカシミヤというものを買った。ちょっとだけ余所行きのそれはウールのセーターとは違いちくちくすることなく肌になじんだ。
お洒落かどうかは分からないが、きっとこの服は僕をちょっとだけ上等に見せてくれるだろう。
僕はもう一度だけ髪を撫でつけて部屋をでた。
台所に向かうとそこでは、ピンク色のエプロンを身に着けたサクラがちゃかちゃかと忙しそうに動いている。
形も色も様々な器に次々と料理が盛り付けられていく。
サクラの小さくてやわらかそうな手がどんどん一皿一皿を完成させていく姿は魔法の様だった。
子供のような小さな手の爪は短く切りそろえられていて一目で清潔なことが分かった。
この料理なら大丈夫。
そう思った瞬間、僕は自分が思っていたより僕自身は潔癖だということに気づいてちょっとだけ恥ずかしくなった。そして、よく人と住むことを決断したと過去の僕の肩をぽんぽんと叩きたくなった。
「何か手伝おうか?」
サクラにそう話しかけると、じゃあ、これをもっていってとずしんと思い鍋を持たされた。サクラの細い腕でもてたのが不思議なくらい重い。
鍋といっても普通の鍋じゃない。熟して夜の闇に溶ける寸前の夕日みないな色をしていて、ちょっとだけ楕円形をしたやつだ。ホームパーティーとか開いたときにそのまま食卓にのせられるようなおしゃれで西洋の香りがする。実際に、鍋の中からもハーブの香りが漂っている。
きっと複雑に何種類ものハーブやら香辛料が組み合わされているのだろう。僕にはいったいこのなかに何が入っているのか当てることはできそうにもなかった。
そもそも僕が普段口にするハーブと言えば紫蘇と生姜くらいだ。
鍋の中から漂うのはお洒落なカフェなどの前を通ったときに嗅いだことがある何種類かの匂いだ。
僕は期待に胸を躍らせながらその鍋を食卓の真ん中に設置した。
テーブルの真ん中にはあらかじめ鍋より一回り大きく、鍋と同じ楕円形をした厚みのある毛糸の鍋敷きが置かれていたからだ。
後ろからパタパタと軽い足音が何度か往復し、気づくとテーブルの上にはたくさんの料理が並び、サクラがにっこりと微笑んでいた。
「さあ、食べましょう。でも、その前にお話があるの」
サクラはそういって、鍋の蓋をあけた。
サクラは僕が起きたのを確認すると、静かに部屋をでていった。
僕は、慌てて髪を手で軽くなでつけて深いグリーンのカーディガンを羽織った。新品のそれはとても温かく、羽のように軽かった。人生で初めてカシミヤというものを買った。ちょっとだけ余所行きのそれはウールのセーターとは違いちくちくすることなく肌になじんだ。
お洒落かどうかは分からないが、きっとこの服は僕をちょっとだけ上等に見せてくれるだろう。
僕はもう一度だけ髪を撫でつけて部屋をでた。
台所に向かうとそこでは、ピンク色のエプロンを身に着けたサクラがちゃかちゃかと忙しそうに動いている。
形も色も様々な器に次々と料理が盛り付けられていく。
サクラの小さくてやわらかそうな手がどんどん一皿一皿を完成させていく姿は魔法の様だった。
子供のような小さな手の爪は短く切りそろえられていて一目で清潔なことが分かった。
この料理なら大丈夫。
そう思った瞬間、僕は自分が思っていたより僕自身は潔癖だということに気づいてちょっとだけ恥ずかしくなった。そして、よく人と住むことを決断したと過去の僕の肩をぽんぽんと叩きたくなった。
「何か手伝おうか?」
サクラにそう話しかけると、じゃあ、これをもっていってとずしんと思い鍋を持たされた。サクラの細い腕でもてたのが不思議なくらい重い。
鍋といっても普通の鍋じゃない。熟して夜の闇に溶ける寸前の夕日みないな色をしていて、ちょっとだけ楕円形をしたやつだ。ホームパーティーとか開いたときにそのまま食卓にのせられるようなおしゃれで西洋の香りがする。実際に、鍋の中からもハーブの香りが漂っている。
きっと複雑に何種類ものハーブやら香辛料が組み合わされているのだろう。僕にはいったいこのなかに何が入っているのか当てることはできそうにもなかった。
そもそも僕が普段口にするハーブと言えば紫蘇と生姜くらいだ。
鍋の中から漂うのはお洒落なカフェなどの前を通ったときに嗅いだことがある何種類かの匂いだ。
僕は期待に胸を躍らせながらその鍋を食卓の真ん中に設置した。
テーブルの真ん中にはあらかじめ鍋より一回り大きく、鍋と同じ楕円形をした厚みのある毛糸の鍋敷きが置かれていたからだ。
後ろからパタパタと軽い足音が何度か往復し、気づくとテーブルの上にはたくさんの料理が並び、サクラがにっこりと微笑んでいた。
「さあ、食べましょう。でも、その前にお話があるの」
サクラはそういって、鍋の蓋をあけた。
