そうだ。僕はそいつをまだ終えてない。
 やらなきゃいけない事が、ちゃんとある。
 不明確なら不明確なままで答えを出さないといけない。
 探さなきゃいけない、思い出さなきゃいけないモノを。
 忘れようとしていた、僕らの思い出を。
「なら、思い出しに行くか、全部」
 嘘の時間に、夢を見てる暇はない。
 手に取ったストップウォッチを、僕はようやく捨てた。

【第二幕】思い出を掻き鳴らして-Play The Star Candle-

 夢の先には一体なにがあるのか、なんて漠然と考える事があります。
 尋ねてみれば、たぶん、現実とか死の世界とか、そういうモノなのでしょうとみんなは言いますが、わたしはそう思いません。
 きっと、もっと悲しいモノなのだと、もっと寂しいモノなのだと、明確な答えではありませんが、そんな意見をしたくなります。
 理由はわたし自身でもよく分かっていないのですが、人は夢の先なんて永遠に見る事なんて無いから、どんな夢でも夢の途中で目が覚めてしまうから、行ってはいけない目の背けたくなる場所だと思っている為でしょう。
 
 ◇

 最近わたしは、同じような夢を見ます。
 夕焼けの中、父を、止まったダンプカー越しに眺めているという夢です。
 周りには瓦礫が散らばっていて、鉄の臭いがして、ずっと"夕焼け小焼け"が流れている不思議な状況で、わたしは一人泣いています。
 その先がどうなってしまうのか、分かる前に夢は覚めて、続きを見る事は永遠にないのですが、とてもイヤな気分になります。
 一度、母に夢の内容を言ったら、同じようにイヤな気分になったみたいでした。
 おそらく、母もわたしと一緒の夢を見ていたのかもしれません。
 やはり『夢』はあまり良いモノではないようです。
 
 今のわたしは将来の『夢』を持てません。
 何になりたいのか、何をしたいのか、未来の自分がなかなか想像出来ないというのももちろんありますが、一番はどうしても、現実ではない『夢』というモノを見るのが怖くなったからです。
 このままだと、高校生になってもそんな自分を卒業出来ないまま生きていくかもしれません。
 変わりたいという気持ちはあります。しかし、わたしは自分の目で見たモノしか信じたくありません。