「に、……にににに、人魚なの? ほんとうに?」

「ほんとに尾ひれまで見えてんのか……」

 うろたえながらたずねるわたしと、動揺した彼。

 まさか、本当に人魚がいるなんて!

「なんでこんなところで泳いでるの? 海の方が広いしよくない?」

 思わず詰め寄って聞いてしまう。

 だって、人魚なんて初めて見たもん。

 興味津々なわたしとは反対に、彼は焦っているようだった。

「海でお前みたいに見える奴に会ったらやばいだろ!? それに、ここは誰も来ないって知ってたし……」

 そういってぱしゃんと、水面から尾ひれを出して見せる。

 月光を浴びて、本当にきれいに輝いている。

 本物の宝石なんて見たことはないけれど、例えるならこれだ。

 宝石よりもきれい。この言葉がぴったりだ。

「……なあ、これほんとうに見えてる?」

「……うん、アリエルみたいだなって思ったよ。髪も赤いし、きれいなエメラルドグリーンの鱗だし」

 わたしの水着とおそろいだね、なんて笑ったら、彼は「アリエルね……」なんて、大きく息を吐いた。