そう言った彼の指さす先は下半身……、って、なに見せようとしてるのこの人!?

 人魚だと信じて疑わなかった人が実は変質者だった、なんてオチは最低だ。

 と思いながらも、助けてもらったから不思議と警戒心はなくて、なにせこの人イケメンだ。

 目の下の涙ぼくろはいい感じだし、がたいもまあまあいい。

 少しの下心でちらりと覗き見た。

 月の光に照らされて見えるのは、わたしの足と、鱗のついたエメラルドグリーンの……え、うろこ?

「……は?」

 人魚だと思っていた人が溺れかけたわたしを助けてくれたいい人で、だけど実は変質者で、実は人魚でした?

「……はい?」

 びっくりして、言葉が出ないとはこのことだ。

 もう一度、下の方をよく見てみる。

 今は夜だ。暗いし、よく見えなかっただけだし、目の錯覚だ。

 人魚はいたらうれしいし会ってみたいなんて思ってもいた。

 だけど、人魚ってかわいい女の子なんじゃないの?

 人魚姫って言うくらいなんだから、女の子なんじゃないの?

 だけど、何度見ても事実は変わらない。

 髪は長くて女の子みたいだけどいま目の前にいるのは胸が真っ平らな男だし、イケメンだし、ちなみに足は生えていなくて代わりに鱗の生えそろった綺麗な尾がついている。

 姫ではないけど、まぎれもなく、彼は人魚だった。