「げほっ、ごほっ!」

 アリエルは大好きだったけど、泳ぎは得意になれなかった。

 ぶくぶくと沈む中、急に力強い腕に引き上げられて、気づけばわたしの顔は水面から出ていた。

 ……ちなみに、プールは足がつくほど浅かった。

「大丈夫か!?」

 わたしを心配する大きな声に驚いて顔を上げると、目の前には長い赤髪の男の人がいた。

 慌てて首を縦に振る。

「黒髪じゃ、なかったんだ」

 月の灯りで不思議とその人のことが良く見えて、一番に思ったのはそれだった。

 ……そういえば、アリエルも赤毛だったなあ、なんてぼーっと見る。

 ぽたぽたと顔に垂れてくる、彼の前髪を伝う雫に我に返り、距離をとる。

 そんなわたしに、なぜか男の人はびっくりした顔をしていた。

「……いま、なんて言った?」

「え、アリエルも赤毛だった?」

「いや、それは言ってないけど。髪が、赤いって……」

「え、言ったけど。え? 赤いよね? それ」

 なんで目の前の男の人がそんなことを言うのかわからなくて、間抜けな顔をしていたと思う。

 そんなわたしを見て、男の人は下を指さした。

「じゃあこれは、見える?」

「え?」