海姫くんのひみつ


 曲が終わるころ、海姫くんがおもむろに口を開く。

「この勝負、実は最初から俺の負けだよ」

「え?」

「だって、早く見つけてくれないかなって、最初からずっとそう思ってた」

 そう言った海姫くんの頬が微かに染まっているのを見て、わたしの頬も同じように染まっていく。

 恋に落ちるのに、きっと理由はいらないんだ。

 わたしが人魚の彼に惹かれたのも、きっと理屈とかじゃない。

 ……海姫くんも、わたしと同じように、そう思ってくれてるって思ってもいいのかな。

「プールで会ったとき、俺も人魚だと思ったよ。西園寺さんのこと」

 唐突に、彼があの日のことを話し出す。

 水の中に落ちてきたわたしがエメラルドグリーンの水着をまとってて、赤には染められなかったものの赤みが強い茶色の髪が、まさにアリエルみたいだった、って。

「俺も、アリエルわりと好き」

 かわいいよねと、わたしの胸まで伸びた赤茶色の髪をひと房手に取る。

 そのしぐさに、少しだけ恥ずかしくなる。

 海姫くんって、こんなひとだったんだ……!

 初めて知る彼の姿に、気恥ずかしさだけがこみ上げてくる。