海姫くんのひみつ


 授業が始まって5分くらいは経っただろうか。

 わたしはまだ海姫くんの手を握りながら、彼の回答を待っている。

 足元では、イヤホンが本体から取れてシャカシャカ鳴り続けるiPod。

 リピート再生しているあの洋楽が、またサビに差し掛かろうとする。

「……西園寺さん、答え合わせ、する?」

 ふいに、彼が口を開いた。

 ちょっとだけ恥ずかしそうに、小さな声で、iPodに合わせて口ずさむ。

 あの時一緒に歌ったへたくそな洋楽のサビの部分。

 わたしはあの日から毎日この曲を聴いて、口ずさんでいた。

 きっと前より、ちょっとは上手になっている。

 それは、彼も同じ。

 聞くに堪えなかった、黒板引っ掻き音みたいな声じゃない。

 ちょっとテンポがずれたり、音程も外すけれど、恥ずかしそうに歌ってくれる姿はあの日のまま。

 海姫くんが、人魚の彼だ――。