ころころと転がり続け、やがて誰かの爪先にぶつかって、やっと止まった。
耳元でシャカシャカとなっているあの洋楽が、ちょうどサビに差し掛かる寸前だった。
わたしが拾うより先に500円玉を拾い上げ、目の前に差し出してくれたのは、重ための前髪で目元が隠れた背の高い男の人。
その人の口元が動く。ぱくぱく、と。
けれど、大音量で音楽を聴いているわたしにはなんて言ったか聞こえなくて、慌ててイヤホンを外した。
「あの、500円! ありがとうございます! なかなか止まってくれなくて!」
「ふふ、すごい転がったよね」
小さく笑うその姿に、なぜだか不思議な感覚に陥る。
はい、と手渡された500円。
差し出した手のひらに、少しだけ冷たい彼の指先が僅かに触れた。
……それだけなのに、なぜか思ってしまったんだ。
この人だ、って。



