「オレはイザベラを想っていてもいいんですか?」

 それでも言葉を探して、必死になって伝えれば、イザベラの両手がオレの背中をぎゅっと掴んだ。

「ありがとう。貴方でよかったわ」

 イザベラが鼻声で答える。

「綺麗なイザベラ」
「ごめんなさい」
「謝らないで」
「だけど」

 言葉を封じ込めるようにもう一度キスをする。

 こんな時に名前を呼んだ女は貴女たった一人だと告げたら信じてもらえるだろうか。

 きっと、なにを言っても信じないだろう。契約の延長と、そう思うに違いない。
 だったら、もう言葉なんかいらない。