「気にしていません」
「良い名をって思った時に、これしか思いつかなかったの。私が初めて付けた男の子の名前。そして一番愛していた子。私にとっては最高の名前を贈ったつもりだったのよ。でも、その子とあなたを重ねて見たことなんてないわ。だって、犬のジャンはあなたよりもっと従順で……いえ、貴方が反抗的とかそういう意味じゃなくて、ううん、ああ、なんて言ったらいいのかしら」
いつもとは違って饒舌に、一生懸命説明しようとする姿が幼く思えた。そして、それが切なかった。幼い、何も知らないイザベラも好きだ。
「……うん。オレも好きでした」
「本当に?」
「はい、ジャンて呼んでください」
そう答えればホッとしたように、ヘニャリと笑った。かわいい。