うつむいて、息を詰めるイザベラの黒くつややかな髪は、そのまま夜の空気のようで、甘い匂いが漂ってくる。
 イザベラは薄汚れた犬のヌイグルミを抱きかかえ、寝室から出て行った。
 オレは大きなため息をつく。やっぱり、オレを受け入れることは無理なのだろうか。だけどもう猶予がない。イザベラが一番に望むもの。それがセシリオとの生活なのだったら。

 オレは大きく息を吐き出した。

 無理やりにでも叶える。嫌われても、拒絶されても、殴られて暴れられても。
 そのために雇われた。オレはそのための奴隷(どうぐ)だ。

 寝室のドアが開いて、イザベラが戻って来た。理由はわからないが、ヌイグルミを隣の部屋に置いてきたらしい。
 イザベラは、真っ赤な顔をしてギクシャクとベッドに腰かける。