「……(わたくし)もそれは考えました。それでも、きちんとセシリオを成人させれば疑いなど晴れるでしょう?」
「ええ、晴れます。でも、シニョリーア家が疑われること自体を私は良しとしません」
「でも、そうしたら貴女は……、あなたはそんな得体のしれない男を信じるというの? 幸せになれないわ。身分もお金も失って、考えるより大変なのよ? イザベラお願い、我慢してちょうだい。一時の甘い言葉に惑わされないで」
「優しい伯母様」

 イザベラは微笑んだ。

「ありがとうございます。私はジャンと一緒になろうと思っているわけではないの。リッツォ家の身分自体が重荷なのにシニョリーア家の名など、とても背負えません。だったら、全てを失った方が私らしく生きられるのだと、今気が付いただけなのです」
「重荷ですって」
「嫌いなわけではないわ。大事なのよ? でも、伯母様、私は着飾ることも知らないし、上手く話すこともできないの。伯爵夫人などとても務まらないわ」

 シニョリーア伯爵夫人は大きくため息をついた。