「ジャン、ありがとう。貴方のおかげで気が付いたわ。私、そうね、私、聖女じゃなくてもできることがあるのね」
「そうだよ」
「今と変わらないだけだものね」
オレは力強く頷く。
「そうだ。イザベラは聖女じゃない今だって、立派な仕事を残してる」
イザベラは頷いた。
「ごめんなさい。伯母様。やっぱりシニョリーア家に嫁ぐことはできません」
「イザベラ! 目を覚ましなさい!」
「夢を見ているわけではないの。私がセシリオの後見人のまま嫁ぐことで、シニョリーア家にあらぬ疑いをかけられるのは嫌なのです」
シニョリーア伯爵夫人は黙った。