「私がセシリオの側にいたいの。それがたった十年しかないとしても、その十年は何にも代えられない。だから、それでいいのよ」

 オレはギュッと拳を握った。自分の未来を投げ捨てて、それでも側にいたいと思われるセシリオが羨ましかった。
 親も知らないオレは、そんなの理解できない。

「……明日伯母様が屋敷に来るそうよ。あの不祥事で心配をされているようなの」
「そうですか」
「覚悟を決めなくてはね」

 イザベラは蒼白な顔をオレに向けた。

「あ、」

 口に出してうつむく。

「ご主人様?」
「いいえ、なんでもないわ」
「仰ってください」

 指先が震えている。イザベラは大きく息を吸った。

「あ、明日、私の側に居てくれるかしら?」

 イザベラの震える指先を、オレの両手で包み込む。

「もちろんです」

 ニッコリと微笑んで見せる。イザベラはホッとしたように頷いた。