あれからイザベラは熱を出して、部屋に(こも)りきりだ。ショックが大きかったらしい。
 オレの首の傷は皮膚を傷つけただけで、瘡蓋がひきつってはいるけれど大したことはない。

 イザベラの寝室に入り、お茶を用意する。セバスチャンから預かった手紙を、サイドテーブルに置いた。
 そして透明の筒に浮かぶガラス玉の色をみて、隣に置かれたノートに数字を書き込む。これは温度計というものらしかった。その隣には結晶の張る瓶があり、その様子と天気を合わせて記入する。

 文字の書き方も、計算の仕方もすべてイザベラに教わった。

 イザベラが手紙を読み終えて、封筒に戻したのを確認してから、イザベラのベッドに横座りに腰かけて、額に手を当てた。

「大分よくなりましたか?」
「ええ、迷惑かけてごめんなさい」
「オレがトラブルに巻き込んでしまいました」
「貴方は被害者よ」

 イザベラはオレの首の傷に指をそっと伸ばした。

「キチンと首輪を付けるべきだったのかしら。そうしていれば傷つかなかったわ。わかるけど、でも、嫌だわ。私は嫌だわ」

 真面目な顔をして、唇を噛むからおかしかった。みんな当たり前にしてること。