「……嘘ではない、のね?」

 イザベラが俯いて問うた。真っ赤な顔だ。

 息を飲む。

「本当です」

 伝わった?

「ならば、許すわ」

 ふいとイザベラは背中を向けた。その汗ばんだ背中まで桃色に色付いていて、思わずもう一度、そう手を伸ばそうとした、その時。

「何にも知らない乙女のようなふりをして気を引くなんて、さすが頭の良い方は違いますわ」

 刺々しく懐かしい声が、闇夜の中にスルリと入り込んだ。

「ねぇ、そんなに嫌ならちょうだい。泣くほど嫌なら私に返して」