「困ったわね」

 イザベラはため息をついた。

「皆さんはどんな名前を付けたの?」
「この間までは、アルベルト、その前はレオ、マルコって言うのもありましたね」
「その中に気に入っている名前はある?」
「まさか! 新しい名を付けてください。貴女のための名前で、貴女に呼ばれたいのです。ご主人様」

 今までの主人をいちころに転がしてきた完璧な微笑をたたえて、すがるようにイザベラを見つめた。
 イザベラはオレのキメ顔を見て顔を赤く……していないだと?

 イザベラは心底めんどくさそうにため息をついた。

「そうねぇ、だったら、みんなの名前から一文字ずつ。アレマにしましょうか」

 のんびりした声に、老紳士が小さく吹いた。そして、取り繕うようにゴホンと咳払いをする。
 あまりの適当な名前の付け方に愕然とする。

「ちょ、それはないでしょ!?」

 思わず突っ込めば、ギロリと老紳士がオレをにらんだ。そうだった、オレが逆らっていい相手ではない。